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静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 16

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  アンプ部は小さなシャーシに組んだので温度上昇が半端でない。真空管とセメント抵抗が主な熱源だ。以前コントロール・アンプの電源用筐体に用いたLEAD社製のラック用ケースを転用する予定にした。表と裏のあちこち空いている余計な穴は最小限アルミ板で塞ぐか、あるいは表も裏も無垢のアルミ板で作り直すか。(2022.03.01)  途中にカソードフォロワを挟んだ3段直結というのは、最初に考えていたポリシーからは少し外れている。初段の12AX7Aのプレート抵抗(内部抵抗)が大きいため終段のミラー効果との関係で高音域の減衰が気になってカソードフォロワを挟んだのだ。初段が6DJ8とか6BQ7Aであればプレート抵抗が格段に低いのでカソードフォロワを挟む必要はない。ただ、12AX7Aに比べてµが33~38と低いので、利得も低くなり、負帰還を掛ける余裕は無くなる。もうひとつの選択は12AY7に戻すことだ。µは44で、その代りプレート抵抗は12AX7Aほどではないが6DJ8や6BQ7Aに比して大きい。12AY7→12AX7A→12AX7A+12AX7Aカソフォロとなったのにはそれなりに理由がる。  回路を見直していて、出力は6463のプレートからそれぞれ0.4 µF 1,000 Vのフィルム・キャパシタで直流を切って、直流電位をグランドに落とすために1 MΩで接地しているが、同じところから初段のグリッドに負帰還を掛けているので不要ではないか、と思ったので早速外してみた。  特に問題無いようだ。ついでながら、負帰還抵抗を外した抵抗に換えて負帰還量を6 dB程度に戻してみた。正確な利得の測定や矩形波観察は後回しだが。(2022.03.06)  しばらく使ってみて分かったこと。聴感上は全く問題ないが、直流的安定性が低い。終段のプレート間の電圧を2 V以下に調整しても、しばらくすると20 V位になったりする。直結ゆえの不安定性である。直流はキャパシタで切っているので交流出力ほとんど問題ないが、動作点がふらふらしているので、最大出力には影響があるだろう。この変動は商用電源の電圧変動と関係していて、スライダックで電圧を加減するとキチンと変動する。初段と終段の結合を切れば良いのだが、キャパシタが増えるのはちょっと面白くない。電源を全て安定化電源にすればおさまるだろうが、それも面白くは無い。少し考え...

SR-X MK3 ジャンクの修理2

 うちのStax SR-X MK3 ジャンク君はアマゾンで購入した無印のイヤーパッドを両面テープで装着してからまずます快調なのだが、いつも1~2 dB程右側の音圧が高い。左側を分解清掃しても効果が無い。ソース側でバランス調整して聞いていたのだが、より高齢のSR-5君や少し若いSR-Λ nova signature君(どっちもジャンクだが)と聞き比べるときにはちょっと不便である。  恐らくは振動膜にわずかな導電性を与えているコーティングが不均等にはがれてきているのだろう、と勝手に推測してみた。SR-5の場合には静電防止剤のLicron Crystalをスプレーして左右の音圧が大体揃ったという経験がある。ただ、Licron Crystalをそのままたっぷりスプレーすると導電性が高すぎるかも知れない。電荷があまり動かないように、いろんな考え方があるようだが、私的には 10 9 ~ 10   Ω□程度になるのが理想である。もっとも振動膜にレスキューシートのような金属を蒸着させた導電性の高い膜を使う方もおられる。この辺りは設計思想の違いと言えよう。  まず、左右ともに分解して振動膜Assyを取り出した。Licron Crystalスプレーには溶剤として2-プロパノール(イソプロピルアルコール)が入っているので、今回はLicron Crystalをガラスの小瓶にスプレーして2-プロパノールで4~5倍に希釈して眼鏡拭き用のマイクロファイバー・クロスで振動膜の両面に薄くのばすように塗ってみた。マイクロファイバー・クロスなら塗った面に繊維が残ることも少ない。2-プロパノールは水と違ってすぐ乾くので有難い。勿論メタノールやエタノール程ではないのだが。特に膜と金属製リングとの間は、ティッシュ・ペーパーをこより状にひねったものに溶液を浸して溶液が行き渡るようにする。面相筆があれば便利だろう。  振動膜Assyを元通り組付け、早速試聴。周波数によって多少違うが、左右のバランスが改善され、大体揃っているようだ。これで暫く聴いてみよう。  ヘッドホンに比べるとスピーカから出る音は気軽に聞き流せる。それほど細かなところまで気にしないですむ。一方ヘッドホンだと細かいところまで聴こえる、聴こえてしまう、というか、聴いてしまう。細かなところを無視できない、ということがだんだん分かってきた。テレビ...

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 15

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 アンプ部の回路が大方固まったので電源部を少し見直す。ヒーターが点灯してからB電源の電圧がかかるまで遅延させるために大昔のサーマルリレー管を使っていた。NECのBGA-120 (B-2038)というものだが、さすがに2分待つのは長すぎる。サーマルリレー管自体も老朽化のせいか二度三度とスパークしてから導通する。これが正常なのか異常なのかも良く分からない。CRでスパークキラーを自作して接点をまたいで入れてみたが効果がなかった。  そこで傍熱整流管の5AR4(GZ34)に再登場頂いて二段重ねの下側のブリッジ整流回路と平滑用のチョークの間に入れてみた。トランスからBGA-120に給電していたのが5 V 2 A程度の巻線だったのでそのまま5AR4に使える。ヒーターが完全にウォームアップするのには10秒前後かかる。実際には数秒経った辺りで音は出て来る。なお、用いた5AR4はロシアのSOVTEK製。英語とロシア語で印刷された質素な紙箱に入っていたが、プレートの見た目などは昔見たドイツ製に似ている気がする。電源スイッチを入れてからじわっと電圧が上がるので、一定時間後にパッツンと入るリレーを使ったディレータイマーよりも良いかも知れない。5AR4も両方のプレート間に数百ボルトの交流が掛かる両波整流ではなくこのような使い方なら長く使えそうだ。チョークとシリーズで入れたのは後ろに大きな電解キャパシタが付いていることもあり、5AR4が暖まり始めたときのラッシュカレントは少しでも抑えたいからである。高圧の二次巻線の後に抵抗を入れたのはダイオードに流れる尖頭電流値を下げておきたいためで、本当はヒーター巻線にも入れたのだが三端子のシリーズ・レギュレータの電位差がギリギリ。商用電源の電圧低下でレギュレータの電位差が不足すると共用している差動のカソード負電源からのノイズが増える可能性があり、取っ払ってある。トランスには14 Vと書いてあっても実際には負荷が掛かってもっと低くなる。現在の回路は以下の通り。  電源部もほとんどの部品はジャンク箱にあるものであつらえた。例えば、トランスは往年のトリオ(現ケンウッド)のHFトランシーバーTS-520の電源トランス、B電源用の電解キャパシタは50CA10 PPに使っていて熱で頭が少し膨らんだもの、ヒーター用電源の電解キャパシタは古いQUAD 405から外したもの...

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 14

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 ゲインは余っているし、 入力トランスを外して差動化を試みた。バラック組の空中配線で試したら何とか行けそうだったので、カソードからDCバランス調整のポテンショメータを経て定電流回路を2チャンネル分ユニバーサル基板に組み直した。 定電流回路はトランジスタで組むか、LM334Zにするか、TL431とトランジスタにするか、と悩んだが、LM334ZもTL431もジャンク箱の中にある筈だが、どっかに隠れて見つからない。そこで大昔の2SK30A GRのソースに抵抗を入れて約1.1 mAのカソード電流(2本分)とした。温度変化に敏感な様ならほかの方法を考えれば良いと割り切った。抵抗は固定抵抗とポテンショメータを直列に入れて微調整できるようにした。  入力は各グリッドに47 kΩを繋ぎ、 入力は キャノンタイプのXLRレセプタクルとして、そのままなら平衡入力、片側を接地すれば不平衡入力でも対応可能とした。入力インピーダンスが47 kΩなら真空管プリアンプでも問題無く接続できよう。雑音面では 少し 不利かも知れないが。 平衡型の負帰還を軽く掛けておく。  各部の電圧配分を見ながら初段の共通カソード電流を調整し、終段のプレートの電位差が1 V以下になるようにDCバランスを調整する。全体の電圧配分は安定している。  各部のB電源が2階建てになったが、それぞれにリプル・フィルターか定電圧回路を組み込もうか?電源部はアンプ部とは別体としたのでシャーシ内にまだ余裕がある。やってもあまりご利益は無いかも知れないが。(2022.01.17)  6463のプレートの負荷抵抗は消費電力が3W強とそこそこ大きいので2本の抵抗をパラにしているが、電圧の最大定格を考えるとむしろ2本シリーズの方が良い。アマチュアは発熱に直結するので抵抗器のW数の余裕は気にしても電圧の最大定格をしばしば無視しているが、今回は超えてしまう可能性がある。本式に組む時には考えてみよう。(2022.01.21)  10 kHz矩形波の応答を見てみた。 1 kHzでのゲインは約50.4 dBだ。 立ち上がりが早くなったが、オーバーシュートが出ている。リンギングはほとんどない。サイン波でスイープしてみると、入力トランスが無くなりカソードフォロワが入ったおかげで高域の周波数特性はスッキリ伸びているが、150 kHz辺りに緩やかな盛り上がり(...

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 13

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 当初の設計ポリシーをあっさり諦めて初段の後にカソード・フォロワ段を加えてみた。終段のプレート負荷抵抗には51 kΩ3 Wをパラにしていたが、W数が足りなかった。調整を繰り返すうち2本が焼けて壊れてしまった。それを知らずにああでもないこうでもないとやっていて堂々巡りしていた。  焼けた抵抗を取換え、周波数特性を計ってみた。無帰還でゲインは約67 dB (1 kHz)。左右は良く揃っていてせいぜい0.2 dBの偏差である。10 kHzまではほぼフラット。-3 dBは約40 kHz、-6 dBは80 kHzである。これはトランスの特性から考えても悪くない。負帰還は掛けずにおく。  ゲインが余っているので入力トランスは1:1+1より1:0.5+0.5の方が良さそう。入力部には音量のコントロールと左右のバランス調整が欲しいなあ。いっそトランスを取り外して初段の共通カソードに定電流回路を入れて差動にしてみるか?  うちのStaxジャンク三兄弟のSR-5とSR-X MK3とSR-Λ nova signatureでとっかえひっかえ楽しく聴いているのだが、先日迄と僅かに印象が変わり、低音が良く出ている気がする。特段、低音域の時定数に大きな変化は無い筈だし、周波数特性上の変化は無いのだが?  もしかして、電源部とシャーシを別にして1 m程のコードで繋いでいるのだが、アンプ部のB電源の入口を0.4 µFのフィルム・キャパシタだけで済ませたのがまずかったかな?初段とカソフォロ段の所にはしっかり電解キャパシタを入れておいたのだが。アンプ部のB電源の入口は動作時には730 V、一応電源部にディレー回路は入っているが、直結回路の電圧配分が落ち着くまでは800 V近くまで上がるので、電解キャパシタを入れるとすると二階建てになるのでさらっとフィルムで済ませておいた。平衡増幅なので、電源回路のインピーダンスへの要求は低いとたかを括っていたのだ。ここは10 µFでも良いから入れた方が良い?(2022.01.13)

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 12

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 静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプMK15は今のところ満足できるものである。週末にはきちんと測定してみたいと思っている。  当初は全体のゲイン等を考慮して初段に12AY7を使ってみた。12AX7に比べµばかりでなく内部抵抗も低く、終段の入力容量との関係で生じるミラー効果による高音域減衰も軽微だろうという読みもあった。しかし、12AY7でもゲインが余るようなので6 dB程度の平衡型の負帰還を掛けることになった。それなら、初段にもっと一般的でジャンク箱の中にも複数眠っている12AX7を採用して、負帰還をもう少し増やしてゲインを調整すれば高音域の減衰も少ないかも知れない。もちろん、差し替えただけではなく動作点の調整を行う必要がある。これも週末の宿題としよう。(2022.01.06)  金曜日の晩、12AY7を外し、ジャンク箱に眠っていたECC83 (12AX7同等)を刺す。プリントはTelefunkenとなっているが、本物かどうかは知らない。どこで手に入れたかも忘れた。かなりくたびれている筈だ。TelefunkenのECC83は電気的性能は立派だがプロのレコーディング・エンジニアの評価が必ずしも高くないとぺるけ氏が書いておられる。暫く使って気に入らなかったらジャンク箱の中にはSiemensもMullardも東芝もナショナルも眠っている筈だ。いずれもプリントを信じればの話だが。もう死語になったであろうが、カンマツという言葉があった。神田、乃ち秋葉原ではどこで作られたか分からない真空管のプリントを消して「マツダ」(東芝のブランド)と印字して高くで売っている、という意味だ。神田生まれのマツダで、カンマツ。個人的にはTelefunkenのECC83に悪い印象は持っていない。幸せなことにプロのレコーディング・エンジニアのような鋭い耳を持っていないので。  真空管の場合ブランドの差よりも個体差が大きいように思う。経年劣化に従って特性も変わる。双三極管の場合にふたつのユニットの差違も結構ある。日本で生産されていた時代なら何十本も大人買いして選ぶことも出来ただろうが、今となっては夢。多少の差違を許容し調整できるような回路設計が求められる。  ECC83のプレート電圧が約125 Vになるように初段の電流調節のポテンショメーターを回す。6463の両プレート間に電圧系を入れて電位差が...

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 11

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謹賀新年  新年になってまだ一時間も経っていないのにはんだ鏝を握り、MK-15の入力トランスの二次側に抵抗を入れた。    抵抗の有無で特段の音の変化は感じない。MK-14では時に感じた硬さや歪っぽさを感じることはあまり無い。もう少し透明感があると良いんだが。。。(2022.01.01)  陽が上り、文字通り元旦となった。アンプは安定している。YouTubeから探して色んな民族音楽とか聴いてみる。気分の問題だが、差動による位相反転も良いが入力トランスによる位相反転には安心感がある。極低音域も極高音域も自然に減衰してくれるようだし。  調整は難しくない。まず、初段のプレート電圧が所定の値になるように初段の共通カソードに入っている電流調整の半固定抵抗器(多回転ポテンショメーター)を調整する。次に出力段のプレート間で電位差が無くなるように平衡調整の可変抵抗器を調整する。それだけ。平衡調整用にはコスモスの小型ののものを使ってみたが、これも多回転ポテンショメーターの方が適していると思う。ちょっと回しただけで出力段のプレート電圧が大きく変化するので。  各所の抵抗は全部ジャンクの使い回しなので、並列にしたり、直並列にしたり、空中配線かつ中途半端な方法ででっち上げている。左右でもバラバラ。もし、数年以上使うために作り直すとしたら、新規購入だな。また、古い線材ははんだの乗りが悪く久し振りに天ぷらはんだをいくつか作ってしまった。作り直すなら電源部も増幅部と一体化して、左右の音量調整、バランス調整、入力切替もあった方が便利だな。東京光音電波の古いアッテネータやロータリースイッチが箪笥の肥やしならぬジャンク箱の肥やしになっているから、使うなら今かも。でっかい昔のBTSっぽいVUメーターもあったはず。図体がでかくなりそうだ。SRA-3S位の大きさのが可愛くていいのだが。VUメーターつけて入力をXLRのレセプタクルにするとかなり大きくなりそうだ。高インピーダンス不平衡入力と600 Ω平衡入力を備えたアンプを目指してMK-12を解体してドッキングさせるか?  それにしても、SR-lambda nova signatureだとホールトーンっぽくて、SR-X MK3だとかぶりつきみたい印象なのはそれぞれの特徴として巷間しばしば言及されてる噂とあっているようだが、一番古くてぼろぼろのSR-5が一寸左...