静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 14
ゲインは余っているし、入力トランスを外して差動化を試みた。バラック組の空中配線で試したら何とか行けそうだったので、カソードからDCバランス調整のポテンショメータを経て定電流回路を2チャンネル分ユニバーサル基板に組み直した。定電流回路はトランジスタで組むか、LM334Zにするか、TL431とトランジスタにするか、と悩んだが、LM334ZもTL431もジャンク箱の中にある筈だが、どっかに隠れて見つからない。そこで大昔の2SK30A GRのソースに抵抗を入れて約1.1 mAのカソード電流(2本分)とした。温度変化に敏感な様ならほかの方法を考えれば良いと割り切った。抵抗は固定抵抗とポテンショメータを直列に入れて微調整できるようにした。
入力は各グリッドに47 kΩを繋ぎ、入力はキャノンタイプのXLRレセプタクルとして、そのままなら平衡入力、片側を接地すれば不平衡入力でも対応可能とした。入力インピーダンスが47 kΩなら真空管プリアンプでも問題無く接続できよう。雑音面では少し不利かも知れないが。平衡型の負帰還を軽く掛けておく。
各部の電圧配分を見ながら初段の共通カソード電流を調整し、終段のプレートの電位差が1 V以下になるようにDCバランスを調整する。全体の電圧配分は安定している。
各部のB電源が2階建てになったが、それぞれにリプル・フィルターか定電圧回路を組み込もうか?電源部はアンプ部とは別体としたのでシャーシ内にまだ余裕がある。やってもあまりご利益は無いかも知れないが。(2022.01.17)
6463のプレートの負荷抵抗は消費電力が3W強とそこそこ大きいので2本の抵抗をパラにしているが、電圧の最大定格を考えるとむしろ2本シリーズの方が良い。アマチュアは発熱に直結するので抵抗器のW数の余裕は気にしても電圧の最大定格をしばしば無視しているが、今回は超えてしまう可能性がある。本式に組む時には考えてみよう。(2022.01.21)
10 kHz矩形波の応答を見てみた。1 kHzでのゲインは約50.4 dBだ。
立ち上がりが早くなったが、オーバーシュートが出ている。リンギングはほとんどない。サイン波でスイープしてみると、入力トランスが無くなりカソードフォロワが入ったおかげで高域の周波数特性はスッキリ伸びているが、150 kHz辺りに緩やかな盛り上がり(+0.8 dB)があるようだ。これが矩形波ではオーバーシュートとして見えるのだろう。ただ、これは全く問題ないような気がする。測定機材が狭帯域なのであまり高い周波数はあてにならないが-3 dBが凡そ450 kHzでそこからは減衰。600 kHzで-10 dB位。アンプの動作には発振するような不安定さはないので、そのままでもいいような気がする。ただ、中波帯のAMラジオの帯域とも被るので高い周波数は少しカットした方が良いだろう。
位相補正をする前に、もうちょっとゲインがあっても良いかなと思って、負帰還を軽くする。
測定系がボロボロで少し雑音が載っているようだ。SR-X MK3を繋いだ状態で矩形波の応答を見た。負帰還を軽くしただけでオーバーシュートがうんと小さくなった。ゲインは54.8 dB。-3 dBが150 kHz、400 kHzで-5 dB位。音?ゲインが違うのはもちろん分かったけど、それ以外は全然変わりませんねえ。私の耳には。(2022.01.23)
アンプの10 kHz矩形波応答のオーバーシュートは必ずしも悪いものではない。要は高い周波数でのアンプの安定性が確保されていればいい。ただ、持っている測定機器はすべてジャンクでノイズが混じったり、高い周波数が調べられなかったりするのでMHzレベルで発振していても見つけられるとは限らず厄介だ。カソードフォロワは高いインピーダンスで受けて低いインピーダンスで送り出せる回路なのでミラー効果の大きな真空管をドライブするのに便利である。ただ、下手な配線をするとMHzレベルで発振したりする。MK-15は静電型ヘッドホンという容量負荷を前提としているので高域で動作が不安定になる可能性はある。初段の負荷にCRの補償回路を入れてみようか?(2022.01.24)
調子に乗りすぎた。数百kHzで出力上げてたらプレートの負荷抵抗が静かに逝った。パラにしてたが耐圧不足か?40年前の酸化皮膜抵抗にはハードだったようだ。抵抗で消費される電力はギリギリ大丈夫だと見込んでいたが、甘かったらしい。かかった電圧も高すぎたかもしれない。温度が上がりすぎて抵抗の被膜が焼けただけでなく、はんだが溶けている。
捨てる神あれば拾う神あり。今までの6463のプレート抵抗は51 kΩ 3 Wをパラにして実測25 kΩだったが、タクマンのセメント抵抗で15 W 27 kΩを見つけて思わずポチってしまった!25 kΩから27 kΩへの変更はプレート電流をわずかに減らせば調整の範囲だ。6463の共通カソードは16 kΩと10 kΩの並列で約6.1 kΩのまま。本当はこれもセメント抵抗の6.2 kΩに換えたいところだが、手持ちが無い。最近はセメント抵抗やメタルクラッド抵抗でkΩ台のものが手に入れにくい。つまり高い電圧に耐えるのが手に入れ難い。かといってCOVID19の新しい変種オミクロン株が流行しているので秋葉原をそうそうぶらぶらするわけにもいかない。
ついでに、6463のグリッドに寄生振動避けの抵抗を入れた。6463はさほどGmが大きくは無く、6CG7/6FQ7のパラレル程度。今のところ寄生振動の兆候は無いが、念のためである。12AX7のようなHigh µ管でもカソードフォロワの出力インピーダンスは1/Gmで600 Ω程度であるので、1 kΩの抵抗を6463のグリッドに入れれば1.6 kΩ。ミラー効果で6463び入力容量が凡そ100 pFだとするとハイカットの-3 dBは1 MHz以下になる。寄生振動予防には6463のソケットのピンの近くに抵抗を接続する。矩形波のオーバーシュート対策に初段の負荷にCRの補正を入れてみる。SR-X MK3を繋いで観察した10 kHzの矩形波応答は下図のような素直な形になった。少し補正を聞かせ過ぎたかも知れない。
入力端子から初段のグリッドの間に1 kΩの間に1 kΩを入れておく。初段はµが大きいためミラー効果で入力容量は小さくはない。-6 dB程度の負帰還が掛かるから少し減少したとしてもその入力容量とこの抵抗(+接続された機器の内部抵抗)によって超高域はロールオフする。容量が足りなければ100 pF程度をグリッドとアースの間に入れれば良いだろう。デジタル時代になって空中からも交流電源からも高周波ノイズがバンバン飛び込んでくる。不必要に高音特性を伸ばしているとそれらのノイズが悪さをしそうなので、なるべく入力のところでカットしておきたい。抵抗の代わりに空芯のコイルでも良いかも。
左側チャンネルの1 kHzでのゲインは54.7 dB(100 Vrms出力)で、正弦波で高い方の周波数特性を見てみると、-3 dBが約55 kHzで、-6 dBが約80 kHzで素直に減衰している。右側もほぼ同じ周波数特性だがゲインが0.2 dB程異なっているので、これは後で合わせる必要がありそうだ。
現在の回路は以下の通り。今回は数値も入れておく。終段のB電源は730 V掛かっている。アンプ自作で500 V以上の電圧に慣れていない人は絶対に真似しないで下さい。感電すると命に関わる。慣れている方はもっと良い回路を考えられるだろう。6463のプレート損失は規格内だが、商用電源の電圧変動とか考えたらギリギリだし、普通はこんな使い方はしない。
カソードフォロワ段や終段のヒーター・カソード耐圧にも注意が必要。一応ヒーターバイアスを掛けてある。初段のカソードの2SK30Aによる定電流回路は温度に関する安定性がイマイチで改良の余地がある。終段の共通カソードは抵抗で済ませているが、差動が好きな人は抵抗値を小さくして定電流回路をシリーズに入れたくなるだろう。ただ、この回路では普通のプッシュプルと違い前段と直結になっている関係でカソード電位が高いので定電流回路に抵抗をシリーズに入れたり工夫が必要だろう。個人的には抵抗1本が好みである。ただ、発熱には注意が必要で信頼性の高い10 W級のセメント抵抗に換えたいところ。
さて、54.7 dBのゲインはどうなんだろう。ちょっと多いような。。。PCの信号だとちょっとコントロールし難い。ウォークマンの出力ではどうだろう。あるいは隅で埃をかぶっているCDプレーヤとか?もう少しゲインを減じても良いなら、もう一度負帰還量を増やしてみるか?まあ、暫くはこのままで。。。
今回は試作だったので使い回しの小さなケース(タカチMB14-8-20)の中にバラック組みしたが、セメント抵抗や真空管の発熱が結構あるので電解キャパシタも含め部品があぶられている。もう少し大きなケースに組みなおした方が良いかも知れない。(2022.01.24)
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