静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 15

 アンプ部の回路が大方固まったので電源部を少し見直す。ヒーターが点灯してからB電源の電圧がかかるまで遅延させるために大昔のサーマルリレー管を使っていた。NECのBGA-120 (B-2038)というものだが、さすがに2分待つのは長すぎる。サーマルリレー管自体も老朽化のせいか二度三度とスパークしてから導通する。これが正常なのか異常なのかも良く分からない。CRでスパークキラーを自作して接点をまたいで入れてみたが効果がなかった。

 そこで傍熱整流管の5AR4(GZ34)に再登場頂いて二段重ねの下側のブリッジ整流回路と平滑用のチョークの間に入れてみた。トランスからBGA-120に給電していたのが5 V 2 A程度の巻線だったのでそのまま5AR4に使える。ヒーターが完全にウォームアップするのには10秒前後かかる。実際には数秒経った辺りで音は出て来る。なお、用いた5AR4はロシアのSOVTEK製。英語とロシア語で印刷された質素な紙箱に入っていたが、プレートの見た目などは昔見たドイツ製に似ている気がする。電源スイッチを入れてからじわっと電圧が上がるので、一定時間後にパッツンと入るリレーを使ったディレータイマーよりも良いかも知れない。5AR4も両方のプレート間に数百ボルトの交流が掛かる両波整流ではなくこのような使い方なら長く使えそうだ。チョークとシリーズで入れたのは後ろに大きな電解キャパシタが付いていることもあり、5AR4が暖まり始めたときのラッシュカレントは少しでも抑えたいからである。高圧の二次巻線の後に抵抗を入れたのはダイオードに流れる尖頭電流値を下げておきたいためで、本当はヒーター巻線にも入れたのだが三端子のシリーズ・レギュレータの電位差がギリギリ。商用電源の電圧低下でレギュレータの電位差が不足すると共用している差動のカソード負電源からのノイズが増える可能性があり、取っ払ってある。トランスには14 Vと書いてあっても実際には負荷が掛かってもっと低くなる。現在の回路は以下の通り。

 電源部もほとんどの部品はジャンク箱にあるものであつらえた。例えば、トランスは往年のトリオ(現ケンウッド)のHFトランシーバーTS-520の電源トランス、B電源用の電解キャパシタは50CA10 PPに使っていて熱で頭が少し膨らんだもの、ヒーター用電源の電解キャパシタは古いQUAD 405から外したもの、等々。TS-520の電源トランスは今回の目的には大きすぎるし必ずしも合致してはいないのだが、丈夫そうなので使ってみた。

 PCを用いて、CDからリッピングした音源やYoutubeの音楽を聴いている限りゲインが少々多い。仕方ないので平衡型の負帰還を一寸だけ増やす。ゲインは計測してはいないが凡そ50 dB程度だろう。


 まあ微調整の範囲だ。周波数特性や10 kHz矩形波応答は週末にしよう。(2022.01.30)


 6463の共通カソードの抵抗を5.1 kΩに変更し、各プレートの電流をわずかに増やす。静電型ヘッドホンは容量性なので周波数が高くなる程インピーダンスが下がりロードラインが立ってくる。周波数が高くなっても振幅を得るためには少しでも電流を多くしておいた方が良い。まあ、10.5 mAから12.8 mAに増加した位では大きな変化は無いだろうが。プレート損失との兼ね合いもあり、プレート負荷抵抗は27 kΩのままにしたので6463のプレート-カソード電圧は310 Vから250 V程度に落ち着いた。共通カソードの抵抗は発熱が多いのでなるべく早いうちにW数を上げてセメント抵抗に換える予定。
 上の10 kHz矩形波応答を見るとわずかにオーバーシュートがあるようにも見えるが、まあ、良しとしておこう。ゲインは左右でわずかに差があるが1 kHzで50.6~50.7 dB程。高音域のロールオフは-3 dBが85~90 kHz、-6 dBが125 kHz。負帰還が深くなった分高音域が伸びすぎている感はある。
 あくまで試作品であり電源部とは別体にしたのでアンプ部は小さめのケースに組み込んだのだが、内部には6463のプレート負荷のセメント抵抗4本や共通カソード抵抗2本など熱を出す部品が多い。おまけにアルミのケースで開けたり閉めたりを繰り返したのでネジ穴が駄目になってきた。早めに大きなケースに組みなおした方が良さそうである。しかし新品のケースは高い。また、使わなくなった古い作品を解体することになるだろう。(2022.02.05)

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