STAX SR-Γ キメラ
ちょっと変なものをポチってしまった。
STAX SR-Γというふれこみだが、写真を見るとプラグが金メッキの5ピンでSR-Γ Proかも知れないと思い、普段なら金額的にスルーなのだが無理をして入手した。お財布的にはピンチでしばらく無駄遣いが出来ない。
開けてみるとファストン端子を使わずに直にはんだ付けしてある。SR-X Mk3迄はあり得ない。これはケーブルだけ換装した可能性が高い?でも同時期の長円形発音ユニットのSR-Λ Nova Signatureははんだ付けなんだよなあ。
識者によるとSR-ΓもSR-α Pro Excellentもハンダ接続だそうだ。個人的にはファストンの方が整備性が良いと思うが。また、SR-α Pro Excellentはケーブル左右識別の印刷線が金色印字でPCOCCだそうだ。入手したもののケーブルがこれなのである。
背面のスポンジがボロボロで、取り敢えず適当なものを鋏で切って入れておいた。多分ウレタンスポンジで加水分解したのであろう。SR-X Mk3には10メッシュ位の糸の網に細かな棉状繊維が接着されたものが入っていた。バイアスは230 Vでも580 V(自己責任)でも普通に鳴る。ノーマルバイアス機に高圧掛けるとヒーター・カソード絶縁の劣化した真空管みたいにチュルチュル音が出たことがあるが、これは出ない。もっともこのチュルチュル音は能率が良くなってアンプの真空管雑音がよく聴こえるようになった所為かもしれないが。
素のΓにProのケーブルを付けた可能性も否定できないが印刷線が金色印字なのでSR-α Pro Excellentのケーブルの可能性が高い。発音ユニットに明確な区別点があればいいんだが。これは固定極間のギャップを測るしかない。外見や固定極間距離が同じで仮に振動膜の張力やコーティングが違っても区別できない。1.5 µと2 µは私には見分けられない。SR-ΓもSR-Γ Proは大体どっちも公表された能率が103 dB/100 Vっておかしくないか?昔のSTAXの公表された仕様って時々怪しい気がする。SR-ΓはSR-X Mk3(97 dB/100 V)とほぼ同等でおかしくない筈。
左のユニットが少し音圧が低いこともあり、バラすことに。振動膜へのバイアス回路の接触の問題だけならいいんだが。
バラして両側のリングを含む振動膜ユニットの厚みをノギスで測ったら1.3 mmと手持ちのSR-X MK3の1 mmより明らかに厚い。さらに薄いドーナツ状のステンレスっぽいリングが入るので固定極間距離は1.4 mm位でプロバイアス仕様と考えて間違いないようだ。振動膜ユニットの外側の金属リングへのバイアス電源の接触には問題が無い。例によってバイアス回路に直列に100 MΩを挿入。ファストン端子でなくはんだ付けなので、発音ユニットに溶けたはんだを落とさないように間に厚紙を挿入してはんだ付けした。ファストン端子に換えるかな?
SR-α Proは1985年発売。SR-α Pro Excellentは1989年発売。ノーマルバイアスのSR-αは存在しないらしい?そっくりさんの海外向けにはSR-ΓとSR-Γ Proがあるのに?
あくまで推測であるが、SR-α Pro Excellentのヘッドバンド一式(STAXではアークAssyと呼ぶ)部分が壊れて、SR-Γのそれを使って修理したのではないだろうか?そのSR-Γの頭に当たる部分(ヘッドパッド)のスライドして調整する部分にもクラックが入っていて、そこは瞬間接着剤で補強しておく。スライドは一寸渋くなったが、まあ、自分だけ使う分にはそうそう調整しないから良いだろう。イヤーパッドはSR-ΓやSR-α Proに似た形で、SR-α Pro Excellentとは異なるものが付いている。あくまでSR-Γとして入手したので、SR-α Pro Excellentを名乗るのはおこがましく、SR-Γキメラと呼ぶことにした。
後は音圧差を無くすために再コーティングだ。逆浸透水でLicron Crystalを薄めて振動膜に塗ってみた。音圧は高くなり、左右揃った。が、2週間後に音圧低下。薄めすぎたか?仕方が無いので、振動膜を2-プロパノールで清掃し、Licron Crystalを2-プロパノールで役2倍に薄めて塗布。今度は音圧が低下しないようだ。このまま頑張れ!
発音ユニット後部のボロボロになったスポンジは、ホムセンで購入したスポンジや化粧用のコットンなど試してみたが、比較試聴していると結局何も入れない方が結果が良いので、入れない状態で様子を見て(聴いて)いる。
何度か分解や清掃を繰り返していたら、耳側の保護膜を破ってしまった!!! まあ、これくらいでは慌てなくなっている。代わりに軽量模型飛行機用の1.5 µm厚のポリエステルフィルム(東レ製)を手で良く揉んで皺だらけにして装着。もっと薄いのは無いのかな、と調べてみると、屋内模型飛行機用に0.5 µm厚(DuPont製 OS Film)というのがあるらしい。いや、買うつもりはないけどね。
SR-Γキメラは試聴してどうだったか?SR-X MK3改に比べると上も下もしっかり延びていて弦の音もピアノも悪くない。クラシックだけでなくポップスなども悪くない。ただ、音が重なると一寸五月蠅い感がある。発音ユニットの外側にごく少量のダンピング材を加えた方が良いかも知れない。これから少しずつチューニングしてみたい。ヘッドホンを装着した状態で、手を外側のいろいろな位置に動かしてみると掌を密着させず話していても音色が変わる。振動膜に負荷がかかるのか、それとも右の外側に出た音が左の音にも(逆も)影響するのかも知れない。
欧米ではマニアがSR-Γ Proの発音ユニットとSR-X MK3の筐体を使用してSR-X MK3 Proモドキをビルドしたりしていたらしい。SR-X MK3の筐体、特にあの薄っぺらいイヤーパッドが好きな人が意外と多いんだろうなあ。個人的にはSR-XよりSR-Γの方がの装着感は良いと思う。SR-Γは同じ鳥籠状であってもSR-Λより小型だったため、SR-Λの廉価版だという誤解も一部にはあったらしい。
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