静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 36

 現在、すべてジャンクと言っていいのだが、SR-5、SR-X MK3、SR-Lambda Nova Signature が手元にある。SR-5とSR-X MK3は発音ユニットのバイアス回路に直列に100 MΩを入れたり、繊維質のダンパー?を取り除いてスポンジを入れたり、イヤーパッドを社外品に換えたりしているので、魔改造品とも言えるが、本人はそれぞれに個性があり、気に入っている。もちろん、初期の性能が保たれているなどとは思っていない。

 ときどき取り換えて比較しながら聞いているのだが、並列につなぐと静電容量が倍ほどになり、超高音域でアンプの負担が倍になる。かといってプラグを抜いたり刺したりしていると高抵抗経由のバイアス電源で振動膜に電荷をあたえているため寝起きの悪いこれらのヘッドホンの比較はし難い。そこで、バイアス回路は常に接続しておいて、音声信号だけスイッチで切り替えるスイッチボックスを考えた。


 スイッチはこれまた軸を誰かが短くカットした東京光音電波の4回路5接点のロータリースイッチ(回転切替器と書いてある)。R4-5(昭和35年製造)とある。オークションで見かけるRR44型と同様に約45 mm角のごついスイッチで接点は端子間抵抗5 mΩ以下と誇らしげに書いてある。生産終了品も含めて生産状況を公表している東京光音電波のWebサイトにも無い骨董品。NHKででも使われていたのであろうか?見た目の信頼性は十分だが、結構切り替えに指の力が要る。大きめのつまみ(サトウパーツ K-2901-S)を付けたのだが、すぐ横にヘッドホン用のソケットがあり、操作性はイマイチ。矢じり型のK-66やK-5010あたりの方が良かったかも。

 この無骨なロータリースイッチは取り付け用の3本の皿ビスがなんと旧JIS螺子のプラス。外したビスを作業台の上に置いておいたはずが、いっとき行方不明になって探すのが大変だった。同じ昭和35年製造でもRR44型はマイナスのISOだったと思うんだが、違ったかな。ひょっとしたらマイナスの旧JIS螺子だったか?そもそも旧JIS螺子からISO螺子への変更っていつごろだったかな?私が小学生?昭和40年頃?小学生のころプラスのISOねじの頭にあるくぼみについて工大に行ってた叔父に聞いた記憶がある。

 アンプ部とスイッチボックスの接続にはMT9のソケットとプラグ(これも古いもの)を活用した。スイッチボックスから6芯のコードを伸ばし、それにMT9のプラグを付けた。このプラグはTRIOのTS-520の後面パネルの外部VFOコネクタに取り付けるもの。たまにオークションに出てる。6芯のコードは大昔のノーマルバイアス時代のSTAXの延長ケーブル(たぶんSRE-14)をぶった切って使った。

 アンプ部の方は元々の出力端子(SRD-6やSRD-7から外した6ピン)の穴のひとつを利用してMT管のソケット(お馴染みのサンキューQQQである)を装着。余った穴はゴムの膜付グロメットでふさいでおく。アンプ部の内部の配線はこれでスッキリ。MT管のソケットの取り付け孔(3.2 mmΦ)を開けようとしたら長年使っていた電動ドリルドライバーが壊れた。右回転・左回転のスイッチが破損。仕方がないのでリューターで穴あけした。

 前から時々初段あたりから接触不良っぽいガサゴソノイズが出てたので、これを機に原因追及したらカソードから基板へのXHコネクタハウジングが怪しいので、コンタクトをカシメなおして一件落着。大分慣れたが老眼にはXHコネクタのカシメはつらいものがある。

 ノーマルバイアス側のバイアスは左右で分けていたのをSTAXのSRDなどを参考に1本にした。うちのSR-5やSR-Xは発音ユニットの裏側に高抵抗(100 MΩ)を入れているしSR-Lambda Nova Signatureにはもともと500 だったか470 MΩのSMD抵抗が入っていたのでアンプ側に抵抗(6.2 MΩ)を入れなくてもいいのだが、別のヘッドホンが持ち込まれる可能性も考えてこの抵抗は残しておく。

 切り替えながら視聴してみたが、耳への圧迫感も含め機器疲れしないのはSR-5(ジャンク改)。ただ、ちょっと高音の艶っぽさがないというかややアバウトな印象。それに対して高音はきれいに伸びてるけど長いこと着けているとちょっと耳がつらくなるSR-X MK3(ジャンク改)。私にとってはSR-Lambda Nova Signature (ジャンク改)の出番は少なそうだ(あくまで個人の印象ですよ)。

 不思議だったのはどれもそれほど音量に違いがないこと。公表されている100 Vrmsでの感度はそれぞれ96 dB、97 dB、100 dBなのだが。むしろSR-Lambda Nova Signatureは音源が遠くにあるような感じで、その感度は他より低く感じた。たしかに広帯域ですよ、という鳴り方だが。聞いた感じでの感度はSR-5≧SR-X MK3>SR-Lambda Nova Signature の順。SR-5(ジャンク改)とSR-X MK3(ジャンク改)では振動膜に薄めた静電防止スプレー(リクロン・クリスタル)を塗布したのが効いているのかもしれないし、社外品のイヤーパッドの影響があるかもしれない。

 SR-5とSR-X MK3では振動版サイズは同じで固定電極間のギャップはSR-5が0.6 mmに対してSR-X MK3は1 mmなのでSR-5の感度が高くてもそれほど驚きはしない。ギャップが広いのにSR-X MK3が頑張っているのはなぜだろうか?公表されている感度がどのように計測されていたのか知りたいものだ。それにオリジナルのイヤーパッドで比較しないと意味がないかも知れない。現状、SR-5にはデノンのAHD7000用のサードパーティの代替製品で、耳介を包み込むタイプ。SR-X MK3にはこれもサードパーティの外径80 mmの製品をつけている。厚みは15 mm程あるが非常に柔らかく装着すると割と平たくなり、音道は比較的短い。

 オリジナルのSR-5のイヤーパッドの形状はSR-3以来の伝統の形で耳介を包み込むような形だったが、SR-Xのオリジナルのイヤーパッドは非常に薄く、振動膜と耳介の距離が短く、つまり音道が短く、耳との間に作られるキャビティが非常に小さい。その分隙間ができやすく、できると低音不足になりがちである。この辺りは設計思想の違いであろう。のちにフォンテックリサーチを立ち上げた丹羽久雄 氏がSR-Xシリーズの開発に関与していたとインターネットで読んだことがあるが、SR-Xのそっけない外観、薄いイヤーパッドはフォンテックリサーチのミニフォンに通じるものを感じる。

 確かにSR-Xの外観は、昔の潜水艦映画のソナー手が使っているような外連味のないものだ。個人的には嫌いではない。フォンテックリサーチは薄いイヤーパッドに不等高リングを組み合わせることによって軽側圧にも関わらず高い密着性を確保していたそうので、これをSR-Xに適用したらいいんじゃないかなと思う。残念ながら、以前(45年ほど前かな)、雑誌に載っていた不等高リングの写真は不鮮明でよく分からなかった。


 



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