静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 21

 SRPPの下側の球のバイアスは、マイナス電源側を基準に電源の変動に対して1/μ程度で追従するように変えた。音声信号を入力しながらテストするとうまく機能しているようだ。マイナス電源側に高電圧のツェナーダイオードを直列(33 V+33 V+5.1 V)で入れて、そこからアース(0 V)との間を大体1:µ-1で分圧してカソードフォロワ段のバイアスとした。


高電圧のツェナーダイオード温度特性は一般に良くなく(比較的大きな正の温度係数)、その点が多少心配なのだが、比較的高温になる真空管アンプのシャーシ内で十分に温度が上がってから調整すればその後は安定するのではないかと期待している。季節によってずれるかもしれないが… どうしてもだめなら、5.1 Vのツェナーダイオードを外して、負の特性を持つシリコンダイオードを10個位シリーズに入れてみる予定。

新しい回路を組み込んで試してみると、音声信号を入力しない状態だと電源スイッチを入れても電圧配分がおかしく、出力端子がマイナスに振り切れた状態になる。こういうのも「ラッチアップ」といってもいいのかな?これでは上の球のカソード・ヒーター間の絶縁が危ない。音声信号を入力すると電流が流れだし、正常になる。起動すると安定して電圧配分も調整出来て、出力端子の揺れも小さい。

「ラッチアップ」現象は上側の球のバイアス回路のTL431Cの過電圧保護のためにいれたツェナーダイオード(A01-33)のせいらしく、スイッチを入れても定電流回路が機能していない。定電流でないと下側の球のカソードには低い電圧しか現れないが、グリッドはほぼ固定バイアスでカソード電位より高くなってしまう。ちょっと姑息な手段だが上側の球のグリッド、即ち下側の球のプレートから1 MΩを介して接地してみた。この対症療法で電源スイッチオン後の「ラッチアップ」問題は取り敢えず解消。細かく言えば、上下の球の電流値が異なるとかいちゃもんは付けられるが、元々上下の球のプレート-カソード間電圧も異なるのでこの際細かいことは考えない。

実はこの「ラッチアップ」問題は今までもときどき生じていた。どっか壊れたかと他を当たっていたため真相を把握していなかったのだが、下側の球のグリッドに正のバイアスがかかってダイオード状態になっていた。入力を入れると解消するのだが、なにが起こっているのかよく理解していなかった。それにしても、何度もこんな状態になりながらケロッとしている6463はタフな球である。

バイアス回路には高電圧のツェナーダイオードを直列で入れたのでアバランシェ降伏による雑音がどうなるか気になるが、終段の利得は低いし、グリッド抵抗の下に100 µFを入れたので多分大丈夫だろう。半導体の雑音のことを言い出したらLM334Zのもあるが、使ってる場所で信号との比を考えたら大して問題になりそうにない。初段のTL431Cの方が要注意かも。真空管アンプの筐体の中は温度が高くなる。温度安定性の悪い定電流回路は使えない。TL431Cはその点は良い。また、LM334Zは温度に敏感だが、ダイオード(含トランジスタのダイオード接続)と組み合わせて打ち消すことが可能であるし、ダイオードと組み合わせた場合でも比較的低い電圧から定電流特性を示すのでありがたい。

ラッチアップは無くなったもののスイッチオンからヒーターが暖まって全体の電圧配分が落ち着く迄には少し時間が掛かる。これは気になる。プラスマイナスの電源とヒーター用の電源はトランスから別なので、この問題の解消にはヒーター用の約12 Vを利用してタイマーを入れるのが現実的だろう。

カソードフォロワと終段のグリッドの間に入れた抵抗の値は470 Ωに減らした。1 kΩ→2.2 kΩ→470 Ωと変えてみて、470 Ωが一番150 kHzの盛り上がりが少ない。サイン波で見ると400 kHz位迄伸びている。矩形波では相変わらず小さなオーバーシュートが見えるがとりあえず問題なさそうなので、帰還抵抗に入れたキャパシタ(2本のコードを捩じったもの)も取っ払っておく。気になっているのは、初段とカソードフォロワの段間の結合キャパシタである。0.4 µF 1,000 Vという図体のかさばるフィルムコンデンサで。ラグ板を立ててそれに配線したが、そのためこの高インピーダンス回路を引き回すことになってしまっている。もう一回りおおきなシャーシを選択していたら最短でソケットからソケットへ直付けできたと思う。引き回している部分をシールド線に換えてみようか?平衡増幅の片側辺り20 cm位だから、低容量のものを使えば12AU6の出力インピーダンスが70 kΩ弱(rpは1 MΩ位だろうから実質100 kΩ//220 kΩ)でカソードフォロワ段の12AX7Aの高域特性に影響は少なく、シールドすることによって他の部品との静電容量による結合を避けられるかもしれない。

今までの回路図にあっちこっち書き間違いを見つけてしまったし、実機の配線ミスも…

ところで、このSRPP平衡型で、グリッドの結線を互いに入れ替えたら、交差型(cross-coupled)の SRPP平衡型になるのだろうか?そうしたら利得は倍?かしら?ミラー効果も倍?で出力インピーダンスも倍になるだろうから、高域は早くに減衰するだろう。静電型ヘッドホン用に向いているかどうかはともかく、利得が倍なら、初段を三極管で済ませられそうである。


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