静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 17
謹賀新年(2023年)
大晦日、転寝していたら新年になっていた。
そこそこ忙しく、年とともにものぐさになり、体も動きが悪くなってきたようだ。
昨年の11月下旬、電車に飛び乗ったら閉まる扉に挟まれて、右腕が上がらなくなった。レントゲン撮影、MRI検査と続いて、どうもインナーマッスルが切れているらしい。今回切れたのか、以前から切れていたのかは不明。というのも、一昨年の夏にシュラフから立ち上がろうとして肩を床に強打し、ひどい痛みがしばらく続いたこともあった。さらに10年位前だったか、刈払い機のリコイルスターターの調子が悪くて何回も引っ張っていたら、ひどく痛くなったこともあった。あの時の医師はレントゲンもとらずに50肩と決めつけていたっけ。
今回もひと月以上たってまだ痛い。半田鏝どころかピンセットを拾い上げても痛い。
静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプは解体されて久しい。ずっと何とかしなくてはとは思っていた。
シャーシ内のプレート負荷抵抗の発熱にいい加減辟易して、シャーシの外側ならいいかな?とSRPPを試してみたくなった、
真空管SRPPの設計は、負荷インピーダンスに依存する。低インピーダンスでダイナミックに変化するスピーカ負荷の電力増幅段で使う場合も、高インピーダンスの電圧増幅段で使う場合も平衡条件を満たすのは難しい。
電圧増幅段では、一般に上の管は下の管に対して定電流とまでではないが上の管のカソード抵抗のμ倍の負荷抵抗となり、上の管のカソードから出力することによってカソードフォロワ程ではないが低インピーダンス出力となっている。平衡してなくても、つまり厳密な意味ではプッシュプル動作になっていくださいください下さいなくてもそれなりに利得と低インピーダンス出力で、抵抗結合時よりも低歪で大振幅が得られる(ようだ)。
上の管のカソード抵抗rを交流と直流で切り分けて平衡を取る話は武末数馬氏の著作で知った。 μドライブとかボルテージフォロワとかいうのは積極的にrの交流部分を大きくした発展系である。直流バイアスは自己バイアスと同様にグリッドに高抵抗を介して与える。
下の管に五極管(あるいはjFET、あるいはjFET+Trカスコード)を使い、上に三極管(高Gm、低rpがお薦め)を用いた「ぺるけドライブ」はプッシュプルではないと割り切った別の発展系といえる。
同じ三極管を上下に用いたSRPPのプッシュプルとしての平衡条件は、上下の真空管に、絶対値が等しくて互いに逆方向の信号電流が流れる条件であると考えると、上の管のカソード抵抗rは
r = 1/Gm + 2RL/μ
となる。
リアクタンス性の負荷ならrもリアクタンスにする必要がある。ダイナミック・スピーカのように周波数で大きく変わるものならいざ知らず、静電型ヘッドホン負荷なら比較的単純な容量性なので、定電流素子を使えば割と簡単に実現可能ではないか?周波数が上がれば上がる程rは小さくなるので若干ハイ下がりになるかも知れないが、軽い負帰還でフラットになるだろう。
6463の場合、公表されている特性図を信じて(しばしば現物と乖離しているが)ざっと読み取ると、プレート電圧が300 V、プレート電流が10mA、グリッドは-13 V、μが20で、Gmは約4.4 m℧、rp は約4.5と読み取れる。公表された特性図がどこまで信頼できるかとか、個体差もあるだろうし、とりあえずこの数値で考えていこう。
さて、リアクタンス性の負荷ならrもリアクタンスにする必要があるわけだから、静電型ヘッドホンの容量を110 pFと仮定し、それをSRPPのバランス型増幅すると仮定すると一方のSRPPあたり220pF。それに接地抵抗220 kΩ(実際は帰還抵抗)をパラに入れて220pF//220kΩの負荷。rは2200 pFと22 kΩのパラに220Ωをシリーズに入れ、 定電流回路にパラに入れれば、大体条件を満たす(筈)。ヘッドホンが120 pFなら2200 pFを2400 pFにすればいいわけだ。
定電流回路は低い電圧から動作しないと困るのでLM334Zを選択。これは1 mA程度の低電流なら0.9 V位からでも使えるが最大電流の10 mAに近づくと1.1 V位から定電流となる。LM334Zは温度センサーに使えるくらいの温度特性を持っており、温度に依存しない定電流回路にするためにはダイオード(あるいはTrのダイオード接続)で補償しなければならず、更に1 V近く使えなくなる。しかしながら、上の管がクリップする迄出力を絞り出すつもりは無いので大丈夫だろう。
定電流回路の設定電流は9 mA強としてパラに入れる22 kΩ+220 Ωにも電流が流れるため上下の真空管には一本あたり約10 mA流れることになる。LM334Zの最大定格は確か40 V(30 V?)だったっけ?念の為33 Vのツェナーダイオードをパラに入れておく。
何となくいけそうな気がしてきたので、回路を具体的に考えてみる。まず、MK-18という名前を与えた。
入力はXLR/CANNONで平衡入力だが片側を接地すれば不平衡入力も可。入力抵抗は一般的な真空管式プリも繋ぐ可能性を勘案してグリッド・リークの47 kΩだが、本音を言えばもう少し小さくしたかった。
初段は御馴染み五極管12AU6の差動。MT7ピンの小さくともタフな奴だが兄弟管の6AU6ともども人気がない。後段とは直結しないためスクリーングリッドは直接繋げてしまう。2管のプレート電流が極端に違わないようにカソードに可変抵抗を入れておく。これでバランスが取れないようなら、スクリーングリッドに別々に抵抗を繋いでキャパシタで繋ぐように変更すればよい。
MT7用の国産シールド付タイトソケットは既に市場から消えた。現行の海外製もあるが信頼性はどうなんだろう。メーカーばらばらのリユース品で、接点を清掃して使っている。実は12AU6/6AU6はプレートに見える外側の筒が実はシールドで、内部でサプレッサー・グリッドに接続されているので、電気的なシールドケースの必要性が高くない。ただ、物理的な防御には有用だろう。
初段の五極管の出力インピーダンスは高いため、そのままでは次段のミラー効果で高域が減衰するため、カソードフォロワを入れる。12AX7Aを選択。強引にドライブする必要も無いし、12AX7Aならバイアス電圧も低くて済む。
MT9のタイトソケットは金メッキの海外製を使ってみた。問題が出たらモールドのQQQ(サンキュウ、中央無線)製の現行品に換装する。
終段の6463 SRPPは共通カソード抵抗を5 kΩ程度にして、仮に初段でACアンバランスが多少あっても若干なりとも自己バランスさせたい。この抵抗の両端には約100 Vの電位差が生じるので、12AX7Aのグリッドには電源電圧を分圧してバイアスを与える。これで終段出力(SRPPの上の管のカソード)の直流電圧が0 V前後になるように調整できる。AC電源の変動や温度によって変化してもプラスマイナス10 V程度に収まれば問題無いだろう。
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