静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ

現在、Stax SR-5という随分古い静電型(コンデンサ型)ヘッドホンを使っている。Staxでは昔からイヤースピーカーと称しているが、ここではより一般的なヘッドホンと呼んでおこう。D級アンプ(TPA3255 パラBTL)の出力をトランスを使ったドライバ(StaxのSRD7を部分改造したもの)を介してSR-5に繋いだり、真空管50CA10のプシュプル・アンプ(自作品 MK-13と呼ぶ)の出力管のプレートからコンデンサで直流を切って(SRD1モドキ)繋いだりして聴いている。D級アンプは静かで透明感があり、対してMK-13は少し明るくエネルギッシュな印象でどっちかと言えば好みである。が、真空管は発熱が多い。特に夏場は。D級アンプはほとんど発熱してしないのつけっぱだ。

もう少し小型の真空管アンプの製作を計画してみたい。

オシロで見ていると、私の場合、かなり大きな音で聴いている時でもヘッドホンへの350Vpeak-to-peak程、つまり、RMSだと嵩々125 V程度だ。という事は200 Vrmsの出力を目標にする。あまり大きな信号を与えて、万一振動版が電極にタッチしたりするのは避けたい。SR-5が当初の特性を保っているとすると、トランスジューサとしての能率は100 Vrms入力で96dBとのこと。仮に200 Vrms入力なら音圧は102dBとなる。

Staxの最近のプロバイアス機(振動膜に与えられるバイアス電圧が580 V)だと能率が凡そ倍つまり約6dB高いので、200 Vrms出力のアンプなら十二分に余裕があることになる。

さてどんな回路にしようかな?なるべくシンプルにしたいところ。手持ちの真空管の活用は原則である。入力は平衡、不平衡の両者に対応できること。平衡増幅なら、片側100 Vrmsの出力がとれたら良い。ゲインは高い方が使い易いが、200~600倍程度のゲインが取れたら良いとしよう。

昔々の株式会社時代のStaxの推奨回路は12AX7と12AU7の三段増幅だったか?五極管だともっとシンプルにできないかな?五極管のゲインは基本的にGm×負荷抵抗となる。Gmを高く保つにはプレート電流を流した方が良いが、同一プレート電圧の場合電流が多くなると負荷抵抗を低くせざるを得ない。アワーハウスさんの例では6AU6のEbbを500 V位にして、150倍位のゲインと100 Vrms以上の出力を得てµの低い出力管のドライバーとして使っている。これは使えそうだ。6AU6は少ないが12AU6は複数ジャンク箱に眠っているはずだ。

負荷抵抗を大きくする方策があればゲインはもっと稼げる。12AU6の差動で中µで低rpの三極管をドライブすれば使えるだろう。当たり前すぎて面白みに欠けるが。12AU6でうんとゲインが稼げれば出力段はカソフォロでも行けるだろう。

ジャンクSRD7の片方の出力端子(ソケット、メス)の裏側は、押さえのメタルリングがボンドのような樹脂で固めてある。それを接着剤剥がしで柔らかくして、無理やり剥がして、ソケットを外す。AMPHENOL 78-S6Sによく似ている(同規格?)が接触端子部分の構造が異なるし、ツバの厚さも薄いようだ。SATO JAPANと刻されており、サトー・パーツ製らしい。ただ、私は秋葉原で見たことは無い。SRD6のはネジ止めなんだよね。ふたつとも外してしまうとSRD7改が使えなくなってしまうので、もう1台確保したジャンクのSRD6をばらすしかあるまいな。真ん中の端子を接着剤かプラ棒でつぶせば、STAXプロバイアス機用のソケットに(2021.06.17)。

Stax SR-5のイヤーパッドが大分くたびれてきたので、ア〇ゾンでDenonのAD-H2000系列用のサードパーティ製のをポチった。装着してみると完璧にピッタシとは言えず、スカート(溝に嵌る裾の部分)が少し寸足らずだが実用にはなる。私の耳の形と相性が良いようで装着感がよく、音まで良くなったような気持になる(2021.06.18)。


StaxのSRDドライバでノーマルバイアスからプロバイアスに電源電圧を改造した例はインターネット上でよく見かけるが、ノーマルバイアスのイヤースピーカー、例えばSR-3とかSR-5とかSR-Xをプロバイアス仕様に改造した例は見かけない。誰もやっていないんだろうか?

うちのStax SR-5で、振動膜assyの前後に0.2mm厚のドウナッツ状の金属リングを入れて固定極間のギャップを0.6mmから1.0mmに広げたらプロバイアス仕様に出来るのではなかろうかとは前々から思っていたが、ろくに工具を持っていない素人が0.2mmの薄い銅板とか真鍮版とかをドウナッツ状に切り抜くにはどうしたらいいか?外注が楽だろうが Cheap Chic Audio的にはDIYしたい。鉄板で銅板を挟んで固定して厚板ごと鋸で切って端を整える?絶対失敗するパターンだな。バリのでた縁を振動膜に当てて破りそうだ。0.2mmなら鋏とカッターで何とかなるかも知れないとは思う。

閃いた。バイアス電極の接点部だけ銅かアルミの導電テープを貼って、残りは0.2mmのプラ板切り抜けば良いじゃないか!これならカッターでOKだ。バイアス電源は電流はほとんど流れないんだからコッククロフト・ウォルトン回路でどうにでもなる。耳の周りやコードの絶縁、大丈夫かな?とは思うが。。。

百均でコンパス・カッターを買ってきた。これってオルファカッターのコピー?ちょっと頼りないがプラ板を切り抜くぐらいはできる。同じく百均の0.2mmのプラ板を切り抜いてリング状のスペーサを作り、振動膜assyを挟む形でSR-5の固定極間を広げる。片側は一部切り欠きを作りアルミ箔でバイアス電圧を繋ぐ。



SR-5の発音体セットの組み立てでは周囲の4箇所からとがり先のいもねじが窪みに嵌って固定されるが、固定極間隔が0.4mm広がったためくぼみからわずかにずれ、ちょっと不安定かも。固定極間の距離を広げたSR-5改、取り敢えずそのまま音出し。固定極間距離が0.6mmから1mmに広がって能率が下がるかと思ったが、わずかに下がった程度。そのせいか?右側の音量が左側よりわずかに低い、と思っていたが、しばらくしたらほぼ同等になった。230Vから一気に580Vのプロバイアスに上げるのは怖いので、取り敢えず300V程度で経過観察する。(2021.06.28)

バイアス電圧を415V迄上げてみた。今のところ順調。ただ、バイアス電圧を上げても能率はあまり変わらない気がする。明日は580Vに挑戦するかな?(2021.06.29)

空気の放電距離は1 kVあたりおよそ1 mmだと聞いた覚えがある。今、振動膜と固定電極の距離は0.5 mmなのだから余裕はなさそう。Staxのプロバイアスでは放電事故ないのかな?バイアスにシリーズで高抵抗入れてるから酷いことにはなるまいが。。。バイアスに高抵抗が直列に入ってないQUADのスピーカESL57では中高音と高音の発音ユニットの振動膜に焼けこげが出来ているのが良くみられる。振動膜と固定電極の距離が狭いことも理由のひとつだろう。高抵抗の入れてあるMartin LoganやAcoustatでは振動膜と固定電極との距離も十分あり、焼けこげはまずない。埃が集まっていることはあるが。海外のネット上のフォーラムを見ていると、高圧を掛けた静電型スピーカでコロナ放電を起こした例などが紹介されている。

SR-5改のバイアス電圧を約550 Vに上げる。アンプMK-13改の電源のブリッジ整流の後にCW回路を足したら約680 Vが得られたのでそれを抵抗で分割して約550 V。全波整流型のコッククロフト・ウォルトン回路を小さなラグ板上に組む。元々あった整流回路のブリッジの後ろのホット側に入れていた導通角を気休め程度に広げるための小型トロイダル・コイルは邪魔なのでコールド側に移した。用いた1 µFのコンデンサはジャンク箱をゴソゴソ漁って見つけたフィルム・コンデンサである。計算が間違っていなければ耐圧はこれで十分なはずだ。1N4007 のブリッジの後ろの0.22 µFは出来ればできればもう少し大きい容量の方がいいと思う。整流後に680 V程度が得られているので、470 kΩと2 MΩで分割して約550 Vが得る。

今のところSR-5内部で放電はしてないようだ。通電して恐る恐るSR-5改を聴く。音圧は少し上がった。音?元気は良いが、ちょっと品が無いような印象?気のせいかな?基本的も大きな差異は感じない。

おかしな兆候は無い。暫く通電しておいて、そのまま使おう。まずは今日の午後はZoom会議で利用したが何も起こらなかった。Amazon MusicやCDからリップしたMusic Beeの音源を楽しむ。現時点で、音量は左右良く揃っている。音色は改造前とほとんど変わらないと思う。強いて言えば、オリジナルの大人しめから改造当初は少しやんちゃになったような印象だったが、その後、また静かになったような。。。中島みゆきの地上の星のイントロのドラムスで、前はちょっと歪っぽかったのがドラムらしい音になったような。。。ピアノ曲も全体に静かになったような印象。。。あくまで印象。聞き比べた訳ではないので。

アンプ側の整流回路を改造して抵抗で分割して得た550 Vだが、抵抗分割の後にはコンデンサを入れていなかった。ジャンク箱の片隅から0.4 µF 1 kVのフィルム・コンデンサが出てきたので、外付けのアダプタSRD-1モドキの中でバイアス電源とアースの間に入れてみた。このコンデンサは5ケ1組で買ったのだが、このアダプタの中に5ケ全部入っている。5ケ1組で販売してくれた方、有難う!このコンデンサの追加位では音は変わるまいと嵩を括っていたのだが、アレっ、音が違う。ぐっと静かな感じになって細かい部分が良く聴こえる気がする。グレン・グールドの唸り声が良く聴こえる。理由は良く判らないが、意識していないレベルの雑音の差違か?


1ヵ月位はこのままで様子を見たい。途中でパチパチ放電音が聞こえてくるかも知れないし。その間に新しいアンプについて今考えている回路が安定かどうかバラック配線で確認していきたい。(2021.07.01)

新アンプ構想(妄想)の前に、MK13の回路全体を残しておこう。どうせすぐ自分で判んなくなるんだから。


徐々に冷静になって聴いている。改造前に比べ、低音がマシマシになっているような気がする。うちのインチキマイクで計測してみるか?(2021.07.02)




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