TI社のTPA3255 PBTL (5)

 よし、思い立ったら早めにやっつけた方が良いと考えた。一度バラしてプラスとマイナスの電源のコードを新しくして、筐体とシールド板の接地を電源トランスの取付けボルトの所の1点でとった。基板と筐体の間の絶縁もプラスチック・ワッシャやポリカーボネート・ナット等で確保した。

 基板の各2個の表面実装型のLEDを取り外して細いコードを繋ぎ2色LED(5 mmΦ 赤と緑)を左右2個並べて前面のパイロット・ランプの穴から見えるようにビニールテープで仮止めしてみた。正常に動作していれば赤と緑が同時点灯して橙色なのだが、ICが高温等で異常になったら赤色、クリッピングしたら緑色に変わる(筈)。暇を見付けて2個のLEDをホットメルトかレジンで固めて、筐体に固定してしまえば良いだろう。


 ESL57改に繋いで試聴している。自然で、落ち着いて聴いていられる。特段の問題は無い。スイッチ・オン/オフ時のぽポップ音(thump)も小さく気にならない。一方、電源部の電解コンデンサ36,000 µF(+基板上の4700 µF 4本)のおかげでスイッチをオフにしても暫く音が聞こえる。これは電解コンデンサに並列に抵抗でも入れておけば軽減できるが、敢えてしなければならない訳ではない。D級アンプでこれだけのものができるのなら、真空管アンプを作る意欲は下がるなあ。あと十歳年を取ったら、真空管の光フィラメントやヒーターを見ながら、ノスタルジーに浸れるかもしれないが、60歳後半ではまだまだそこまで枯れることはできないようだ。これで例の裸のAcoustat Model Three (3)をドライブしたらどんなだろうかと想像している。TPA3255のPBTLなので2 Ω負荷でも余裕を持ってドライブできる筈である。

 フロント・パネルはまだ取り付けていない。入手したAntaresについていたそれは所々にレタッチ痕のがあるもので、19インチ・ラック用のビス孔が開けられている。黒色で中央上部のパイロット・ランプの上に四芒星マークと「Antares」、中央下部に「Dennesen」と白で記されている、比較的簡素なもの。オーバーホール+改造の上、このフロント・パネルと天板をピアノ・フィニッシュのようなシックなものに換えてオークションに出品された方もいる。筐体がもう少しがっちり強固に造られていたらそれも良いと思うが、電気回路への投資に比べると筐体は質素な造りなので、どうしようかと悩む。

 本Antaresのシリアル番号はBで始まっている。Aで始まるものもあるようだ。インターネットでみた同型の内部写真と比べると入手したものには一回り大きな電源トランスが使われているようだ。回路や電子部品にはかなり気を使っていたと思われる。回路・部品の改善に高い関心を払った会社だったのだろうか?その辺りはアマチュアに近いものを感じる。好意的に解釈すれば、高級志向で「妥協を廃した」「プロ仕様」「故障の少ない業務用」等に惹かれる金満オーディオ狂ではなく、少ない予算で質の高い音楽再生を求める者に寄り添った設計とも言える。どちらが商業的に成功するかと考えると、残念ながらしばしば前者かも知れないが。

 同時期の製品であるAudionics of Oregon CC-2の方には電気回路だけでなく筐体への投資もされていた。ビスもしっかりしたものが使われ、緩み止めワッシャも入っている。ただし、両製品とも時代を反映してビスの頭はマイナスである。CC-2は筐体自体がヒートシンクとして機能するため全体に温度が上がるという欠点がある。尤も頑強に造られているCC-2でも工作精度のせいなのであろうか?、筐体にタップで切られたねじ山(No.8 UNC 並目)が潰れて馬鹿孔になってしまっていたところもあった。

 さて、LEDを並べてホットメルトで固めてパイロット・ランプの孔の後ろに固定した。フロント・パネルを4か所ボルトで固定。フロント・パネルは特に加工・変更しないことにした。ただ、元々のねじは汚れていたのでジャンク箱から黒いボルトと一寸オーバーサイズだが金メッキのワッシャを拾い出してきて固定に用いた。下部の2本は筐体側にタップが切ってあるが上部の2本はナットが必要なので、フロント・パネルを固定した後で天板を固定する。でも変だなあ、切ってあるタップはミリねじ(M4)だ?天板の皿頭のボルトは既存のを再利用。こちらはインチねじ(No.4 UNC 並目)。

 ホットメルトで固めた2個のLEDは赤と緑の同時発光で橙色で、フロント・パネルと面一ではなく奥目だがLEDを包み込んだホットメルトが光を散乱するように作用してギラギラはせず、蠍座のアンタレスの名前通りの輝きとなっている。


 結局ジェネリックTPA3255基板は計3枚購入し、内2枚はPBTL仕様に改造してDennesen Antaresの筐体に納まった。残りの1枚は特に回路の改造は行わず、バインディング・ポストやRCAジャックを外してQUAD 405-2の筐体に入れて、知人の家に出張している。高評価が得られるだろうか?QUADの衣を着たパンダで、性能も音も良いよ、っと紹介したのであるが。。。直流電源電圧は34 Vで、スピーカーの公称インピーダンスが4 Ω~8 ΩのシステムであればこのBTLステレオ仕様の基板1枚で必要十分な性能を発揮すると思う。

 Dennesen Antaresに組んだPBTL仕様の方は家で活躍中。Antaresから引き継いだRCAジャックは抜けやすいので換装する。元々開いている孔がよく使う秋月電子などの金メッキRCAジャックには大きいので、しっかり固定できるかがしんぱいである。そこで製造中止になったスーパートロン研究所製のJ-103Gによく似たMSK製のHRJ-700に変更。入手の都合でステレオの右と左が赤と白じゃなくて赤と黒になってしまったがまあ良いだろう。取付孔は元々の1/2インチでほぼピッタリだが回り止めの切り欠きはリュータとやすりで作る必要があった。



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