TI社のTPA3255 PBTL (4)
Dennesen Antaresを解体した。筐体は簡便な造りで、
電源のフューズや左右のチャンネルの出力に入っているフューズはそのまま再利用する。入力の可変抵抗器を付けるところが無いなあ。
結局、筐体両側のヒートシンクは無用の長物なのだがそのままつけておくことにした。もはやヒートシンクではなく単なる横板である。筐体の前面には19インチラックサイズの長大な鉄のパネルが付く。ヒートシンクを省くとパネルの横幅が更に無駄に長いことが分かる。将来的にはヒートシンクを捨てて、前面のパネルも小さくして全体に小型化する方が宜いのかも知れない。そうするとQUAD 405を一回り大きくした程度に収まる。
405にしろAntaresにしろ中身がD級アンプに変わるとヒートシンクは無用だ。405の場合は前面のヒートシンクは「顔」なので外す訳にもいかないが、Antaresの場合は両サイドなので無くても良い。筐体底面の四隅に申し訳程度に付けられていた割れかけたゴム足は捨てて、ホームセンターで売っているデッキすのこ用のゴム足を取り付けた。このゴム足は中心の孔の直径が比較的大きく、M3のナベのナットだとすっぽ抜けてしまうので、ワッシャーが必要である。
スピーカーへの出力端子としては所謂ジョンソン・ターミナルを短くしたようなものがついていたが、後ろ側の取り付けナットごとはんだ付けされていて取り外しにくかった。形態的にはPomona 3770辺りに似ている。ここはジェネリックTPA3255PBTL基板から取り外したSP-359モドキ(Pomona 3883の類似品か?)のバインディング・ポストに換える。筐体の取付孔は孔と孔の間隔がぴったりなのでそのまま利用するが、径が約6 mmと小さくSP-359モドキの軸と筐体の鉄板との接触が懸念される。SP-359(モドキも)の取付孔は本来10 mmΦ位で、そこににちょうど嵌るような段差がベースに付けられている。従って取付孔を大きく開け直すのが王道なのだろうが時間が勿体無い。適当なテフロンのブッシュをカッターで輪切りにして厚さ1 mmほどのワッシャを作り、絶縁とした。SP-359モドキにはSP-359と同様に金メッキされた鉄のワッシャとナットがセットとなっているが、真鍮のそれと入れ換えた。
電源のトグル・スイッチは下に下げてONという現在の主流とはちょっと異なる仕様。ここは両切りの大型のトグル・スイッチに換装し、上げてONになるようにした。細い電源コードはプラグの部分が一度切って繋いだ形になっているので、手元にあったIECコネクタの付いた電源コードをぶった切って取り換えた。従ってプラグはアース付きの3P。当初はノイズ・フィルタ付のIEC型インレットを取り付けようとも思ったのだが、後部パネルの穴あけ加工に時間がかかりそうなのと、スペースに余裕が少ないので諦めた。スイッチの2次側というか電源トランスの入力側には念のためスパークキラーを入れておく。電源スイッチと入力のRCAジャックの距離が近いのが心配だが、もしハムが出るようならシールドを考えよう。
改造ジェネリックTPA3255PBTL基板はアルミ板をシールド用に挟んだ
さて、Antaresを見習って、私もおおらかな配線でとりあえず繋いでみる。極細のシールド・ケーブルはもうちょっと太いものに換える。といってもホムセンでまとめ買いしたものだが。前面のパイロット・ランプなどは後回しだ。基板の出力と入力と電源を繋いでスイッチ・オン。基板上に各2個装備されたLEDが光り、無事に音楽が再生された。電源電圧は42 V程度出ている。ちょっと気になるのは、基板上に見えるスイッチング・レギュレータLM2576T-12の動作電源電圧は最大40 Vで絶対最大定格は45 Vとギリギリである点だ。本来ここはLM2576HVT-12を用いるべきところと思われる。同様の基板と思われるもののテストにおいて、電源電圧50 Vではスイッチング・レギュレータ(記事によるとLM2575が使われていた)に起因すると推測されてる不安定動作(22 kHZ、36 kHz、64 kHz、78 kHzにピーク)が報告されている(https://quantasylum.com/blogs/news/quick-look-a-no-name-tpa3255-design)。一方で、電源電圧30 Vではこの不安定動作は認められないとのことであった。ここは暫く様子見だ。不安定ならLM2576HVT-12に換装するか、あるいはLM2576T-12の電源入力に何か直列にでも入れて電圧を落とすことになる。
それ以外でも基板上でちょっと気になるのはオペアンプTL072Cの電源のデカップリング・コンデンサで+電源の8ピンや電源の中点に接続された3ピンと5ピンが基板上のコンデンサから結構遠い。本来はICの足にデカップリング・コンデンサを直付けしたいところ。まあ、現状で問題が無ければそのままで。
まだ、半完成状態なのだがテレビの音声で試聴してみた。静かで癖が無い、というのが第一印象。苦労して組み上げたばかりだからプラシーボ効果もかなりあるだろう。今日の処は、自分への「お疲れ様」を込めて自賛しておこう。そしてカップリング・コンデンサを電解コンデンサからフィルム・コンデンサに換えたのは正解だったという事にしておく。少なくともこの音の出方はQUAD 405-2の筐体に組み込んだステレオの基板1枚のものよりも私の好みだ。あれはあれで気に入っているのだが。
スイッチのオンとオフのポップ音は無いことは無いが全く気にならない程度であった。ジェネリックTPA3255基板に関してはこのポップ音がネット上で繰り返し議論されている。特にスイッチ・オフ時に爆音が出る、といったケースがあるようだ。ひょっとすると電源の電圧にも依るのかも知れない。要はスイッチ・オフ後に電源電圧が徐々に低下して閾値に達したらTPA3255のパワー段がオフになれば良いので、18ピンに繋がるリセット・コントロール回路の定数の設定を工夫すれば支障のない程度に抑えられる筈である。電源電圧に応じて設定できるように可変抵抗器を入れたアンプ基板キットを公開しているところもある。
取り敢えず、の組立て・配線だったので、忘れていたことが多い。基板を固定する金属のスペーサをシャーシからキチンと浮かせるのを忘れた。同時に2枚の基板のアースがスペーサを通じて接続されないようにするのも忘れた。現在は基板のコーティングのおかげで絶縁されている状態だ。これはプラスチックのワッシャとポリカーボネート製のナットでちゃんと絶縁する予定。また、2枚の基板の間に入れたシールド用のアルミ板を接地するのも忘れていた。電源ケーブルのアースを取るのを忘れた。これは電源トランスの取付ビスか平滑用電解コンデンサの取付ビスを筐体への接地点とするのが良いだろう。
前記の平滑用電解コンデンサから各基板への配線の線材は芯線の痛んでいないものに換装する予定だし、その時には電解コンデンサに並列に放電用の抵抗を入れよう。アンプ基板の近くをAC 100 Vの配線がのたうっているのも美しくない。結束して、出来たらシールドしておきたい。アルミテープでも巻いておこうか?
パイロット・ランプ用の孔にプラスチックの板を嵌めて、その裏にLEDを2個並べてみたい。LEDはカソード・コモンの2色か3色のものを用意しよう。2つのLEDの間には簡単な仕切りを作る。基板上にあるFAULTとCLIPと表示されたLEDを取り外して配線を伸ばし、通常動作とFAULT状態とCLIP状態を色で区別できるようにするのは難しくないだろう。
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