TI社のTPA3255 PBTL (3)

 基板の改造は一度やれば慣れたもんさ!とTPA3255を基板から剥がしにかかったら、成功体験があるという慢心、手早くやろうという焦りはどちらもいけませんね、1ピンの銅箔が剥がれ、4ピンの銅箔が半分に。。。もっとじっくり加熱すればよかった!気を取り直して3ピンと4ピンの間の銅箔に切れ目を入れる。剥がすのにかなり加熱したので、大事を取って再利用するのではなくシンガポールから来た新品のTPA3255を取り付ける。0.2 mm程ズレてついてしまったが、多分大丈夫!!

 4ピンと11ピンを0.32mmφの細いスズメッキ線で繋ぎ、1ピンも同様に剥がれた銅箔の残りに繋ぐ。基板裏面で、16ピンと17ピンからのスルーホールの部分を近くのアースのスルーホールに繋ぐ。これでOKの筈。要らないオペアンプとか電解コンデンサも取り除く。基板裏面で出力を並列に繋ぐ。はんだ付けで汚れた部分はアルコールで拭き取って、1枚目の基板同様保護コーティングのはげた所にはハヤコートMark 2をごく少量塗っておく。

 006Pを3本直列で27 Vの筈が、使った電池は大分弱っていたみたい。とりあえず動作は確認できたが、LEDインディケータ(FAULTの方)が時々消えるのは多分電池の容量不足だろうが、ちょっと心配。前回と同様にマックシートCW-3を挟んでヒートシンクを装着する。プラスチック・ワッシャーがひとつどっかに飛んで行方不明になってしまったのでTO-3等に使うネジの絶縁用のプラスチック・ワッシャーの飛び出した筒の部分をカッターで削って間に合わせる。

 QUAD 405-2の筐体に2枚の改造ジェネリックTPA3255基板を固定して、入力、出力、電源を接続し、通電。LEDインディケータが瞬くことなく、正常動作しているようだ。正常状態だと基板上の2個のLEDが両方とも点灯状態となる。この2本のLEDの配線を外に引き出して、電源からも抵抗で落としてきて、カソード・コモンの3色LEDを繋ぐと、白色点灯で正常動作、黄色とかマゼンダで異常動作とか示すことができそうだ。

 2個のLEDの表示は;

    (TI社のTPA3255EVM User's Guideより抜粋)

 QUAD 405-2の筐体はコンパクトなので、ジェネリックTPA3255基板1枚をそのままステレオで用いるのがスマートだろう。そう思って新たにジェネリックTPA3255基板1枚を入手した。同じ会社から買った筈なのに発送元の都市が全く違う。中国は奥深い。

 405-2の筐体に納まった2枚のジェネリックTPA3255基板。余裕でESL57改をドライブしている。テレビの音声を聞いている分には何の問題も無い。案外1枚でも良いのかも。そこで、QUAD 405-2の筐体の中身を無改造のジェネリックTPA3255基板1枚に換える。これでも十分にESL57改をドライブしている。

 段間のカップリング・コンデンサは電解コンデンサを外してフィルム・コンデンサに換えてもいいかも知れない。多分私の耳では聞き分けられないだろうが、子供達は聞き分けるかも。

 思い立ったら吉日。PBTLに改造した方の基板2枚の電解コンデンサ6個を外した。基板のシルク印刷は全て22 μFとなっているが、外した電解コンデンサは頭部に10と記されており、簡易測定してみても全て約10 μFであった。代わりにWIMA社のMKS2型10 uF 50 V 5%の超小型フィルム・コンデンサを半田付けしてみた。サイズ的にはちょうど入る。MKS2については数年前に複数の印字の異なるものが流通し、偽物騒ぎがあった。どれが本物でどれが偽物かは知らないが。極端な例では偽物の中身がメタライズド・ポリエステル・フィルム・コンデンサですらないらしいとか(?)。秋葉原の桜屋電機さんで購入したものなので偽物ではないと信じて(!)いる。ただ、WIMAのコンデンサはその音質を褒める人と、電解コンデンサより悪いという人がいるのも事実。まあ、私は好きですけど。


 そういえば、トモカのスピーカー・コードのバインディング・ポストであるSP-359は太いコードでもしっかり接続できるので割と気に入っている。ジェネリックTPA3255基板にはSP-359とほとんど同じようなものが3個取り付けられているが使わないので外した。基板を3枚手に入れたので全部で9個手に入ったことになる。SP-359のちょっと気になる点は、中心部の導体は磁石がくっつかないので恐らく真鍮と思われるが付属のワッシャとビスが鉄に金メッキなのだ。使うときはこれらも真鍮製のもの(M5サイズ)に変更した方が気分が良い。

 高音域でインピーダンスの低いAcoustat Model Three (3)をドライブするにはPBTLが適していると思うし、もっと大きな筐体で、左右のトランスを別々にして、入力にはRCAの非平衡入力とキャノンXLRのバランス入力の切り替えを付けて、左右に3色LEDによる表示、なんて考えると楽しい。

 少し大きめの筐体と言っても新品を秋葉原で買うと結構高い。加工を自分でやろうとすると大変だし、頼むとお金が掛かる。ヤフオクを覗いたら1980年前後の飾り気のない米国製パワーアンプの完全ジャンク品が出ていた。まさか落札できるとは思わなかったで気軽に入札したのだが。。。ディネッセン・エレクトロスタティック社(Dennesen Electrostatic Inc.)のアンタレス(Antares)という製品である。社名から何となく想像されるように有名なArthur Janszen の流れを汲む静電型スピーカー(ツィータ)を安価なキットやスピーカ・システムとして販売していた会社である。創設者 Frank Dennesen はその前身となる会社 Electrostatic Research Corp.で1970年代中頃 Arthur Janszen と協力して静電型ツイータの開発・製造をしたらしいが、後に袂を別ったらしい。おそらく日本では、DennesenはMark Levinsonの初期のアンプ群の設計者であるJohn Curlが設計したJC-80 プリアンプの販売で知られているだろう。

 Antaresは日本ではあまりというかほとんど知られていない製品である。外観は無骨な黒い鉄の箱で、フロント中央上部に蠍座のアンタレスを想わせる赤いパイロット・ランプがひとつだけで電源スイッチは裏面にある。ゴミが入り難そうな外見は好感が持てる。赤いパイロット・ランプが少し突出しているのが気になるので、できれば面一にできないかな?

 Antaresは終段がMosFETで出力は75 W+75 W(@8 Ω)、120 W+120 W(@4 Ω)。出力的には同時代のAudio of Oregon CC-2と同じ位。当時のお値段は600ドルもしたらしい。Audio of Oregon (Audionics of Oregon) CC-2は時々オークションに出てくるが意外と高価だ。当時のトランジスタは入手が難しいのでメンテナンスはそれなりに大変だと思う。本気でAntaresの筐体をTPA3255 PBTLステレオに使う気で、Antares の電源トランスが使いまわし出来ないなら格安のトロイダル・トランスをできればふたつ探さないといけない。何時になるやら。。。Antaresの熱狂的なファンには申し訳ないが、Antaresとして元通りにレストアするつもりはサラサラ無い。

 残念ながら、入手したのは電源入らず、出力せず、の完全ジャンク。アンプのプリント基板は1980年前後という時代背景を考えてもえらく牧歌的というか集積度の低いもので、簡単に回路を追うことができる。ファイナルの2SK135と2SJ50は当時のオーディオ用としては有名なもので、壊れていなければ欲しがる人もいるだろう。

 100 Vの商用電源に恐る恐る繋いでみるとどでかい電源トランス2次側は交流30 V(低い!)を出しているがブリッジ・ダイオードによる整流後の配線に直流が出ていない?本来2次側には70 V程度が出力されていないとスペック通りのアンプ出力が期待できないはずだ。配線を外してチェックするとブリッジ・ダイオードそのものは壊れていないようだ? これは厄介そうだ。トランスはひょっとすると220 V〜240 Vの巻線側になっているのかも知れない。欧米、中国或いは韓国から日本に入ってきたのだろうか?或いはトランスそのものが壊れているのか?

 取り敢えず分解してみよう。米国製にしては細いネジを多用していて、しかもマイナス・ネジなので外しにくい。固着している箇所にはWD40 をスプレーする。光らなかったパイロットランプはLEDではなく直列抵抗入りのネオン管だった。その配線は細いコードが捩じってあるが、何故か長さに余裕がなくピンと張っている。このネオン管はトランスの2次側に接続されていたが、電圧が低すぎて光ってなかった。AC100 Vに繋いだらちゃんと光る。整流回路のゴツい電解コンデンサーが死んでるのだろうか。防爆弁も異常は無いし、外見は立派なのだが。トランスが死んでいると計画が狂うなあ。。。

 両サイドのヒートシンクにはアンプ基板のMosFET 2SK135と2SJ50の放熱のために付けられてアルミ板Lアングルがビス・ナットで固定さている。これはビス・ナットを外して、ヒートシンクを両サイドに戻しておこう。この巨大なヒートシンクはTPA3255には全く無用だが、そうしないと両サイドがガラ空きになってしまう。あるいは20センチ×14センチ位のアルミ板でも取り付けて蓋をするしかない。

 


 

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