TI社のTPA3255 PBTL

 テキサス・インスツルメンツ(TI)社のTPA3255を使ってみたくなった。純正のTI社の評価・開発用基板TPA3255EVMは色々弄れて興味深いが1枚約2万円と私にはお高い。2Ω負荷に十分耐えるようにとパラレルBTL(PBTL)を試すとするとするとステレオで2枚必要となる。一方、これに範を取り、シングルエンド入力バランス出力のステレオに特化したちょっと怪しげな中国製の基板(TPA3255 ジェネリック基板などと呼ばれている)がAmazonでは5千円強から入手可能だ。入力と出力をパラで繋げばPBTLのモノーラル・アンプとなる筈。PBTLでステレオにするなら2枚必要だが、それでも何とか手が届きそうで、発注してみた。ただ、この手の基板についてdiyAudio等で情報収集するとどうも規格一杯の48 Vは掛けない方が良いらしい。まず実装されているスイッチング・レギュレータが高耐圧型では無いらしいとか。また、使われている他の部品の品質もTIのと比べるとちょっと心配である。

 筐体としてはニコイチで余ったQUAD 405-2のがある。トランスもそのまま使えるかな?と思ったが一寸電圧が低い。古い405と同じトランスなら結線方法で巻線比を変えられる思っていたが、入手した405-2のトランスは巻線が単純化されていてせいぜい26 V DCしか得られない。あるいは52 Vで、52 Vでは高すぎる。インターネット上の情報によれば、この基板上には+48 Vと記されているが40 V程度まででの使用が安全のようだ。その上405-2のトランスは図体がでかくて基板のスペースが確保し難い。24 V 350 VAと称するトロイダル・トランスを格安で手に入れたのでそれを用いることにした。ブリッジ整流後10,000µFで受けるとDC 34 V程が取れる。出力端子や電源端子として基板に付いていた赤黒のバナナプラグ対応の端子(トモカのSP-359にそっくり)を取り外し、RCA入力端子も取り外す。出力端子と電源端子はネジ止めにしよう。入力はシールド線を直に半田付け。

 基板上の表面実装部品の値とTI社のTPA3255EVMの公表回路図から入手した基板の回路を推測した。TI社の公開資料によればパラレルBTL時には専用の結線があるが、入手した基板はシングルエンド入力でバランス出力端子(BTL)のステレオに特化しているので、入力も出力もパラにしてモノ―ラル化してみた(下図の上側、この図の一部はTI社の技術資料から。オペアンプ周りは簡略に描画)。入力インピーダンスが10 kΩ程度と少し低めで2チャンネル分パラレルにすると5 kΩ位となる。半導体プリアンプやPC等から入力する分には良いが、真空管のプリアンプからだと一寸しんどそうだ。入力の可変抵抗器に2連の100 kΩ B型を入れておく。真空管プリを繋ぐときにはこの可変抵抗器を少し絞ると多少は入力インピーダンスが多少高くなり、プリの負担が減るだろう。ゲインもガクッと落ちるが。

 入力部にはオペアンプの反転増幅回路(利得は1)が2段あり、1段目と2段目から180 度位相の反転した信号がTPA3255に送り込まれてBTL動作をしている。段間には表面実装型の電解コンデンサが1枚の基板当り計6個も使われている。このアンプの結果が良くて余裕が出来たら薄膜高分子積層コンデンサー(PMLCAP)か何かに換えるのも良いかも。

 もちろん、これはTI社の推奨するPBTLではない。TI社の技術資料によれば、TPA3255にのM1とM2端子の結線方法でIC内部のマスターとスレーブの設定を切り替えることができる。本来のPBTLの接続は上の図の下側のようにするべきである。それならアンプの入力インピーダンスは10 kΩ程度となる。入力C及びDに繋がるオペアンプの回路は半田鏝で何とか外せるだろう。TPA3255の入力C及びDをアースに落とすのも難しくはない。ただ、M2端子(4ピン)だけを基板から外してDVDD端子(11ピン)に結線するのは、表面実装部品ICのピンを一本だけ浮かせて他につなげることになるのでちょっと難しいかも(或いは4ピンに繋がる配銅箔を切って11ピンに繋ぐ)。しかも、上にはヒートシンクがあるので空間に余裕がないので絶縁も考えないと。表面実装部品を基板を傷付けずに取り外したりするのは慣れていないので、練習する必要がありそうだ。

 現状のままで真空管プリを繋ぐことを考えるなら、オペアンプ周りの入力と帰還部分の10 kΩを100 kΩ位に取り換えると良いだろう。これで、入力インピーダンスはPBTLで50 kΩとなる。ただ、多少ノイズには弱くなるかも。

 TI社の推奨するPBTLの回路に改造するならば、IC周りの抵抗は22~47 kΩ程度で良いだろう。また、好みのオペアンプを使って別のユニバーサル基板に回路を組んで段間のコンデンサーもフィルムに換えてTPA3255に繋ぐ方が現実的かも知れない。XLRレセプタクルを入力端子にしてシングル入力とバランス入力をスイッチで切り替えられるようにするもの悪いアイディアではない。

 折角QUAD405-2の筐体に組み込んだ後なので、今からTPA3255周りの基板の配線を弄るのはリスキーだ。やるとすれば、新たに基板を1枚入手して試してみるのも良い。Amazonではまだ格安ジェネリック基板が色々な名前の業者(製造元はひとつ或いは少数かもしれない?)から販売されている。私の場合は中国浙江省の金華市から送られてきた。TI社の方針によりエンドユーザーを特定できない流通経路でのIC等の販売が禁止となったので、今後このTPA3255基板の入手も難しくなるかもしれない。一部の不心得者の行動によって優秀なパーツがアマチュアの手に入りにくくなったのは極めて遺憾だ。

 現状の音?特段問題無し。QUAD ESL57改からはごく普通の音が出てると思う。

コメント

このブログの人気の投稿

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 36

静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 35

SR-α Pro Excellent (ジャンク)