妄想:Acoustatをドライブするアンプ

 裸のAcoustat model Three (3)はまずフレームを考えなければならないが、妄想はどうしてもアンプに向かう。ダイレクト・ドライブは取敢えずギブアップ。となるとトランスで落としてまたトランスで上げるのは嫌なので半導体アンプだ。現在繋いでいるAudionics CC-2改もまだ元気なのだが、D級アンプ、乃ちデジタル・アンプはどうだろうか? 

QUAD ESL57改は現在VSX-S510という中古のAVレシーバでドライブしている。そのパワーアンプ部は60 W×6 chのデジタルアンプで、意外にESL57改との相性が良い。おかげでESL57改は完全に家のテレビ再生用のAVシステムの一員になっている。

ダイレクトドライブの妄想は全く諦めた訳では無いのだが、ほぼ絶望的となった今、安価な中国製無印デジタルアンプでドライブして見たくなってきた。最近のデジタルアンプは特性も良くなった。

Acoustatスピーカーのインピーダンスは比較的平坦で、Acoustat社の会長であったJames C. Stricklandの著したThe technology of Full-range-element Electrostatic Loudspeakersという6ページほどの文章の最後に載っている。


このグラフにはMK-121とは書かれているが、スピーカーのどのモデルと組み合わされていたのか、発音ユニットは何枚だったのかは不明である。が、参考にはなろう。約30 Hzから約16 kHzの範囲で見ると、3 Ωから6.5 Ωの範囲にあるようだ。容量性なのでより高い周波数では更に下がるのは確実だ。20 VRMSを2 Ω負荷に出力できることを目標にしよう。 VRMSを20 VRMSの出力は8 Ωでは50 Wだが2 Ωでは200 Wであり、10 ARMSの電流を流せないといけない。となると、テキサス・インスツルメント(TI)のTPA325Xシリーズで電源電圧を30 V程度にすると良さそうだ。

テキサス・インスツルエンツの公表データによると、TPA3255は

10%THD+N時の総出力電力:
BTL構成で4 Ωへ315 W (ステレオ)
BTL構成で8 Ωへ185 W (ステレオ)
PBTL構成で2 Ωへ600 W (モノラル)

1%THD+N時の総出力電力
BTL構成で4 Ωへ260 W (ステレオ)
BTL構成で8 Ωへ150 W (ステレオ)
PBTL構成で2 Ωへ480 W (モノラル)

という可成り強力なものらしい。

TPA3255はTIには評価用基板(TPA3255EVM)と云うのがあるのだが、私にはちとお高い。中国製だ一体とどこが作っているのか分からないが同じような製品がAmazonやeBayに色んなディーラー(?)から出品されており、値段も色々。5千円位から有る。

許容限界に近い50 Vの電源を繋ぐと雑音や不安定等不具合が出ることがあるらしいが、30 V程度なら大丈夫らしいことが記されたサイトを見付けた。

https://quantasylum.com/blogs/news/quick-look-a-no-name-tpa3255-design

BTL接続で最大300 W+300 Wクラスのステレオ基板として売っているが、電源を30 Vに下げれば、BTLなら雑音歪率1%で8 Ω負荷で50 W + 50 Wの手頃なアンプ。パラレルBTL(PBTL)のモノーラルなら2 Ωで安定して160 W出せる事になるだろう。基板1枚5千円強なら2枚買っても宜い。奇しくも基板の抜けたQUAD 405-2の筐体が有る。

基板の大きさがギリギリだが、基板上のトモカのSP-359そっくりの出力端子2組と電源端子を取外し、必要なら基板を削れば宜い。電源トランスは元々AC 40 V ✕ 2を供給しブリッジ・ダイオードで全波整流で±50 V程度を供給する物だが、1次巻線の使い方を工夫すればAC 22 Vを二組作れる。ブリッジ・ダイオードで整流すれば28 V位が得られる。2 Ωで160 Wなら約18 VRMS、先に考えた20 VRMSに僅かに届かないが。Acoustat のインターフェイスの昇圧トランスで200倍、つまり18 VRMS×200=3600 VRMSで、これで足らない事は無いだろう。

無印中国製基板はAmazonやeBayに沢山出品されている。写真は使い回しが多く、使われている電解コンデンサーの違いで大きく3種類に類別される。TIの評価用基板から試験用の部品を取っ払ったものらしいが、部品の質や精度は不明。雑音の多い物、動作が不安定の物もあれば、スイッチのオン・オフで爆音の出る物もあるそうだ。スイッチ・オン時のノイズはBTL接続ではさほど大きくは無さそうだ。値段の安い基板はスイッチ・オフ時に爆音を発するタイプなんだろう。その爆音の対処方法は既に知られていて、リセット・コントロール回路を少し改変すれば回避できるらしい。つまり、TPS3802K33DCKRが使われているのならそのVDD(4ピン)の閾値が確か2.93 Vなので、動作時はそれより僅かに高く、スイッチ・オフで低くなるようにしておけば宜い。しかし、大出力時の電源電圧が変動して低下したときに閾値より低くならないようにしなければならない。

これら無印基板はTIの評価用基板の主要部分をそっくりコピーして、試行錯誤出来る部分を削り落としたものらしい。調整の必要な部分もその意味を考えず初期値の部品を付けてあるのだろう。

爆音タイプを安く買って電源に合わせて手を入れるのが合理的だろう。

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