Stax SR-5 with SRD6

 高校生だった頃、友人がSTAXのヘッドフォンSR-3を持っていた。STAXはヘッドフォンと呼ばずイヤースピーカーと称する。ちょっとだけ聞かせてもらった。高音質であることは分かったが、やや神経質な音で、欲しいとは思わなかった。曲が良くなかったのかも知れない。確かマーラー。リパッティのショパンとかグールドのバッハでも聞いていたら貯金したかも知れないが。

STAXは静電型とは呼ばず、コンデンサー型と称する。STAXの創業者である林 尚武 氏(1906年〜2000年)以来の伝統である。株式会社としてのスタックスは1995年に無くなり、その後は有志によって有限会社としてブランドを継承し、理解ある中国企業の傘下に入って伝統を引き継いでいる。

林 尚武 氏はラジオ技術に発表予定の製品の解説を行ったりされていた。静電型トランスジューサ―に対する拘りはかなりのものであった。また、オールホーンシステムを自宅に備えた音楽・オーディオ評論家であった高城 重躬(たかじょう しげみ、1912年~1999年)がSTAXのイヤースピーカーを高く評価しラジオ技術誌上で紹介したため、STAX製品はマニアに愛されることとなった。

私にとって常に気になるブランドではあったが、私には高価であったこと、1080年頃から超高級志向で手に取ることはなかった。唯一手にしたのはカートリッジを取り付けるシャルぐらいだろう。

ここ数年、QUAD 57に始まって静電型のトランスジューサへの関心は強まっている。たまたまジャンクのStax SR-5とSRD6を入手した。40年以上前の製品である。右の音圧が低いということであった。

プラスチックにはひび割れもあり、発音ユニットのプラスチックには、発音ユニットとヘッド・バンドを繋ぐピンが埋め込まれているがこれがすぐ抜けてしまう状況である。だが、行方不明になっていないだけましだ。この辺りはおいおい補修していきたい。

取り敢えず職場でアンプに繋いで聞いてみる。最初はちょっと神経質なハイ上がりの音。うーん、やっぱり高校のときの印象と同じか、としばらく放っておいた。半時間位してから聞くと、おっ、これは良いじゃないか。スピーカで聴くより良い。よし、家に持って帰ってじっくり調べよう。

アダプタSRD6の筐体を開いてみる。トランスレス構造は、現在は許されないんだろうな。消費電流は極少で、抵抗が直列に入っている。スイッチはないがヒューズは入っている。現在製品化するなら、トランスとスイッチを付けることになるだろう。

整流ダイオードの足が黒く硫化?している。早速1N4007に変更。コンデンサもササッと換装。容量も増加。バイアス電圧を測ってみるとえらく低い。双方向性のシリコン・サージ・アブソーバ (VRD)のZ1082の両端の電圧が低く、その結果整流後の電圧が160V位しかない。既定のバイアス電圧は200~230Vなので、整流直後(3.5MΩの手前)で測って200V以上は欲しい。Z1082を外し、抵抗による分圧に換えた。これは、まあSRD5への先祖返りではあるが。

一方、アンプ保護のために入っているポジスタはそのままにしてある。これを4~5Ωに換えると更に先祖返りである。流石に茶色いベークライトのプリント基板は古さを感じる。半田鏝を当てて部品を外していると銅箔が剥がれやすい。当時の接着剤は熱に弱かったのか、それとも経年劣化か、その両方だろう。SRD6の取説からコピーした回路図にいじったところを赤で記入した。当時は取説に回路図をキチンと載せている。昔から回路図を公開しない会社もあったのだが、製造物責任法の制定以降どの会社の製品でも回路図は公開しなくなった。Staxは当時からアマチュアの工夫に情報を公開していたし、接続コンセントのような部品も販売していた。いまでもあのコンセント(旧型は6ピン、バイアス電圧が高く変更された後は5ピン)は分譲してくれるのだろうか?

バイアスが規定値に近くなったせいか、能率もよくなったようだ。左右のバランスは問題ない。ガチャガチャ無神経に運んだりしたのが良かったのかも?QUAD 57改と切り替えて聞いてみたが、QUADより細かいところが聞こえて、良いなあ。

専用アンプを作ってみようか。しかし、コンデンサ負荷のアンプはとくに高音域の設計が難しい。StaxがSR-1の時代に出ていたSRD1というアダプタみたいに、管球PPアンプの出力管のプレートからコンデンサーを介して信号を取り出すのがシンプルで良い結果がでそうだ。遊んでる300Bが4本あるから、ステレオPPアンプを作ってみるかな?0.1V RMS入力で100V RMS出力となると利得が60dB(1000倍)となると2段増幅では苦しいなあ。まあ、50dB倍位でも実用的だろうが?300Bの利得が3.2~3.3(10dB)だとするとドライブにPeak-to-Peakで240 Vが必要である。全体の利得を500倍(54dB)~1000倍(60dB)稼ぐには無帰還で作るとしても300倍(50dB)必要となる。なるべくシンプルな回路にしたいものだ。

しばらく聞いていたら振動膜の電荷が蓄積されたのか音量が増してきたが、ちょっと右の音圧が高いようだ(2020.09.24)。

6ピンの接続コンセントを手に入れたくなってきた。?サードパーティのがeBayで売ってるが、自作もできそう。ちょっとお高いUSオクタルソケットをばらして端子を取り出し、プラスチックを加工すれば作れそうだ。

SR-5はSRD6改に繋ぎっぱなしにしていると安定している。モノラルにして聞くと真ん中から聞こえる。左右のバランスの問題は厳密には周波数特性を測ってみないと分からないが、実用上問題無いようだ(2020.09.26)。音?良い悪いは言いませんが、私の好みに合っています。

ウ~~ム、ちょっと左右のバランスが悪いなあ。左の中高音域が弱いのかな。SR-5なのかSRD6改のせいなのか原因をはっきりさせて、もしSR-5なら暇を見つけて分解かな。SRD改の切換えスイッチの接触もあやしいなあ。SRD6改のせいなら、ジャンク箱をごそごそ探して専用アンプでも作ってみますか?(2020.10.03)

ネットで見つけた回路図はコピーライト関係が不明のため、実機から起こした回路図を改造箇所とともに下に示す。高圧バイアスとトランスの2次側の中点との間に入れてあった0.1μFはプリント基板上に穴が無く、基盤の上端に後付けされていた。これはとりあえず0.22μFにしたが、本来は無くても良い筈だ。また、Z1082を外してしまったので、筐体後面の100V~240Vと書いてあるが、100V専用になってしまったことになるので気を付ける必要がある。(2020.11.22)。



別のSRD6を入手したので、チェックしたら、件の0.1μFは付いていなかった(2020.12.11)。










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