アンプ修理2020年その1

K先生からアンプ修理の依頼があった。そういう事でもないと半田鏝を握ることが無くなっていることに気が付く。やり掛けや計画で止まっているプロジェクトが多い。

2020年6月18日(木)まず2台を引き取った。

まずは、左右のバランスのえらく崩れたQUAD 44。後期型なのでトーンコントロール基盤にはTL072が5ケ。多分このオペアンプが劣化したかなと勝手に想像する。コロナ禍のおかげで秋月電子の営業時間が短縮され、入店人数も制限されている。しばらくは行くチャンスがないなあ。QUAD service data all versions をダウンロードして後期型の回路をじっくり見ておく。CD入力やRADIO入力の端子から信号を入れると、差し込み式のCD入力基盤やRADIO入力基盤の出力端子ではそろっているのに、トーンコントロール基盤では左右のバランスが非常におかしい。オペアンプを購入するまでお預けである。

では、ということで、全く音の出なくなったLuxman CL36に取り掛かる。重い。ウッドケースから取り出して函体をあけてみると、SYLVANIAの6189(12AU7WA)が一本光っていない。フィラメント切れでした。前回手を入れたときに1965年生のNOSで安かった(確か4本で送料込み6千円しなかった)ので入れたのだが、凡そ7年の使用で逝ってしまったことになる。12AU7の耐振管なのだが、運搬時の振動で切れたのかも知れない。

とりあえず、ジャンクボックスで眠っていたEIの12AU7を刺しておく。ニッケル・プレートで個人的には見た目がちょっと好みではないんだが、この球はノイズが低く悪くない。EIは確か旧ユーゴスラビアの会社だったが、国が大変なことになって分離独立後は、セルビアの会社ということになり、その後倒産したらしい(不確か)。

このアンプ、他は問題ないみたいなので、早々に函体を閉めウッドケースに戻す。ただ、ウッドケースを取り付けるビスが短く、ちゃんとしたワッシャーが入らないので、小さな薄いワッシャーで何とか固定されている。次回のドック入りの際にはビスとワッシャーを交換したいところ。

ここで問題発生。10年前に入手し、レストアして愛用しているリーダー製オーディオ・テスターLAV-191号がおかしくなってしまった。実際私にとっては非常に便利な機器だ。それが、スイッチを入れてしばらくは動いているが、メーターが大きくふらふらした挙句、動かなくなる。付属のマグネチック・イヤホンで調べると発信音が聞こえ、オシレータ部分の機能は確認した。ミリボル部がおかしい。LAV-191の後継機LAV-192Aはメーターが2針式で、ステレオの左右が同時に計測出来てもっと便利だが、私は左右をスイッチで切り替える191で満足している。

久し振りに函体を開けて調べていくが、なかなか原因(病巣)にたどり着けない。トランジスターはほとんど全部外してチェックするも問題なし。海外のサイトから英文のInstruction ManualをDL。AC30Vをブリッジ整流した後に簡単な安定化電源回路が入っているが、どうもこの辺りが問題のようだ。電源部の出力電圧を18Vに調整する半固定抵抗を回しても電圧が上がらない。18Vどころか、最初16V位だが、すぐに下がりだし、11Vくらいで落ち着いてしまう。これではメーターが振れない。仕方がないので、、トランスから基盤へのACの接続を外し、ついでにシリーズレギュレータとして入っている放熱板付きのトランジスタを外して整流出力が伝わらないようにして、代わりに006Pの乾電池を2個シリーズに外付けできるようにしておく。

LAV-191本体の電源を入れ、外しておいた006P乾電池を接続すると測定できる、という仕組みである。めんどくさいが当座これで乗り切ろう。

週4日勤務なので、休日の木曜日、秋葉原に出て、ササッと買い物をして帰る。トーンコントロール基盤のTL072を全部取り外し、ソケットを半田付け。そしておニューのTL072 IPを刺す。が、あまり変化がない。あれれ~~?半田の弱っているところを補強しておく。

この機種は、入力の切替えを、物理的なスイッチではなく古いCMOSアナログスイッチ IC MC14066Bを4個使って行っている。このアナログスイッチ ICの基盤への半田付けに問題が生じていたらしい。半田付けし直しでほぼ症状はなくなった。

CMOSアナログスイッチそのものはそう簡単に壊れるものではないもののON抵抗は低いほどいいだろう。本当はすぐ換装してもいいんだが、今問題が起きているわけではないし、次回に回そう。14P のICソケットとMC14066Bのもう少しON抵抗の少ないもの、例えば東芝のTC74HC4066AP等への換装が考えられるので、秋葉原に行く機会があれば入手しておこう。

ついでに、信号回路のあちこちにシリーズで入っている電界コンデンサ100 μF(6個)を三栄電波で購入したニチコンの新しいのに換装しておく。

006P電池2個を引きずったLAV-191号でチェックしてみると、ほぼ左右が揃っている。厳密に調整すると真ん中より1 mm右で左右均等なので、マスキング用の紙テープで印を付けておく。

2020年7月12日(土)
さて、QUAD 44とLUX CL36をK先生の元に運ぶ。少しだけ試聴させて頂く。QUAD44 + Luxman MQ68。悪くないですね。QUAD 44の100 μFを新しくしたのは良かったかも。変な神経質な音は出てない。

次に、Luxman CL36 + Luxman MQ68。アッ、こっちの方が自然ですねえ。古い録音でも歌声が自然。

MQ68はできれば今のうちに手を入れておきたいけどねえ。50CA10が暴走する形で壊れると出力トランスまで駄目になるから。分割巻きで性能は一流だけど、OY15型は巻線が細く、断線事故が多い。今となっては壊れたら代わりが無い。

Luxmanのアンプってかっこいいし、性能も悪くないが、耐久性には少し疑問がある。固定バイアスで出力を絞り出している割には、肝心のバイアス調整の半固定抵抗器がむき出しで経年変化を考慮していない。本来ならば、半固定抵抗器の接等が駄目になってもバイアスが極端に変わらないように半固定抵抗器の端子1(固定端子)と端子2(摺動端子)の間と、2と3(固定端子)の間にそれぞれ固定抵抗を入れておくべきである。あるいは端子2(摺動端子)を負電源側に短絡しておいて、半固定抵抗器の先導端子の接触が悪くなった時にバイアスが深くなる(つまり出力管のプレート電流が抑えられる)ようにしておくと良い。ハイ・アマチュアの試作品みたいな設計だと思う。ホーム・オーディオの場合、多くのユーザーはしょっちゅう発振器とミリボルとオシロでチェックする訳ではないから、性能よりも安定性を指向すべきではないのかな?

長期間にわたる使用を考えれば、電源電圧をもう少し低くしたいし、暴走を予防するためには自己バイアスに改造するのが現実的かも。30Wが半分の15Wになったとて最大音圧が3dB下がるだけなのだから。よほど能率の低いスピーカーで無い限りは。P-610Aクラス(90dB/W/m前後)なら1 W、LS3/5A(80dB/W/m前後)でも10 Wあれば家庭では困らないだろう。

さらに2台のアンプを預かった。ONKYOのデジタル・プリメイン・アンプ A-973と懐かしのKENWOODのA-M70。A-973はヒューズが飛んだだけらしい。A-M70は入出力端子の辺りがおかしいとか。以前預かったA-M70は入出力端子を魔改造(下図)した覚えがある。



だが、今回受け取ったのはノーマル。以前の個体は他所にお嫁入りしたらしい。お嫁入させたら寂しくなって新たにこの個体を入手されたのだが、入出力端子付近に接触不良のような重大トラブルがあるらしい、とか。この機種はちっちゃい函体だが真ん中に重いトランスが入っていて、凶器になる重さだ。アンプ本体はSTK4141X(だったと思う)とかいうサンヨーのIC。この個体も入出力を魔改造するという手も考えたが、とりあえずは半田付けし直したら症状が出なくなったので、これはこれで良しとしよう。

さて、ONKYOのA-973だが、確かにヒューズが飛んでいる。どこにでもありそうなミニのガラス管ヒューズだが2.5Aという規格。近くの電気屋やホムセンで見つからなかったので、困ったときのAmazonに頼んでおいた。届いたら、換装して完了である。とりあえず3Aのヒューズを入れて聞いてみる。最初、メイン・スイッチを入れてもスタンバイにしかならなかったが、取説を読んだら、スピーカー・セレクタでスピーカーAのボタンを押しながらメイン・スイッチを入れるとスタンバイにならずにオンになることが分かった。欲を言えば専用のリモコンがあると便利なのだが。雑音もなく普段使いにはこれで十分である。

ところで、LAV-191号だ。いつもいつも006Pを付けたり外したりはめんどい。当方はただでさえボケてきているので、電池を付けずに「どこかおかしい」と悩んだり、使い終わった後も電池を消耗させたりと、無駄が多いのだ。

2020年7月16日(木)

もう一度Instruction Manualの安定化電源回路を見る(下図)。使われているトランジスタの利得から考えてそんなに厳密に安定化されているとは思えない。昔の普通のシリーズㇾキュレータ回路だ。いっそ三端子レギュレータで置き換えてもいいかも知れない。確かLM317Tの買い置きはあったはずだから。ただ、三端子レギュレータが高い周波数で発振とかされても厄介である。


Q216の2SA561はQ215の2SD235のベースに適当な電圧と電流を与える定電流回路を成しているようだ。違っているかもしれないが。D207とD208は両方とも1S1555と判断したんだが、D208は回路図PDFがかすれていてよく見えない。しかも回路図は手に入ったが、パーツリストは残念ながら付いてなかった。2本ともIS1555だとするとシリーズで2本の電圧降下が約1.4 V位だ。多分2SA561のBE間に適当な電圧を与えているんだろうが、ショットキーダイオードSD103Aで代替してみたがうまくいかない。定電流回路ならJFETで代替できる筈なので、ジャンク箱の2SK30Aのソースとゲートを接続して定電流ダイオード代わりに入れてみた。が、まだ駄目。

そこで、一度外して確認して大丈夫だと思っていた半固定抵抗器VR205の3.3 kΩを再度疑う。上下の抵抗を外してVR205の中点、すなわちQ217のベースに、電源出力とアースから2本の抵抗を外付けして出力電圧を分圧してベースに加わるようにすると、それなりの出力電圧がちゃんと出る。やった~。つまり原因はVR205の半破壊のようだ。単体でテスターを当てたときは一見正常で、スイッチを入れた直後は接触しているのだがすぐに接触抵抗が大きくなって、Q217のベース電圧が下がってしまうのだ。そこでジャンク箱を漁り3.3 kΩは無かったが2 kΩのポテンショメーターを見つけたのでちょっと足を曲げて装着。2SA561等はすべて取り払い、部品を取り外した孔を利用して定電流ダイオード代わりの2SK30A GRを取り付ける。まだ、電圧が低かったが、ポテンショメータのネジを回して出力電圧を18 Vに調整することができた。改造後は下図の通り。


電源の電圧はちょっとふらついているようにも見える。LM317T等でキッチリ安定化した方が良いかもしれないが、LAV-191のミリボル計に精密な計測は期待していないから、このままでいいだろう。

よし、とりあえずお預かりしたアンプは4台とも問題解消で、壊れたオーディオ・テスターも復活した。

2020年7月17日

ヒューズが届いたようだ。




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