静電型(コンデンサ型)ヘッドホン専用アンプ 20

結論から言うと今回の試作アンプは失敗だった。商用電源、いわゆるAC100 Vがちょっと変動しただけで回路の直流電圧配分が大きく狂って出力端子に無視できない程の電圧が現れる。

商用電源はAC100 Vと言われるが、95 Vから107 Vの幅(101 V±6 V)が許されており、それ位変動してもしっかり動作するように設計しなければならない(昔はもっと変動したように思う)。そういう意味では今回の場合ヒーター電圧も商用電源の電圧が下がると3端子レギュレータの制御がかからなくなってしまう。東栄のトランスが表示より少し低めの電圧を示すせいでもあるが。対症療法的にサージ防止用に入れた抵抗値を少し小さくしたが、これも課題。スイッチング電源に換えるかな?

出力端子に無視できない直流電圧がフワフワと現れるのは、カソードフォロワのバイアスの掛け方が良くなかったためである。マイナス電源とアースを分圧して与えてたのでアース基準となる。一方、終段はSRPPで上側は立派な定電流源といえる。下側はカソードに共通の抵抗が入っており、下側のカソード電位は上側からの定電流でマイナス電源を基準としてほぼ一定となる。ところが下側の球のグリッドは固定バイアスのカソードフォロワなのでマイナス電源の変動の影響をもろに受け、それに応じてプレート電位が大きく変動する。カソードフォロワを自己バイアスに換えてもあまり意味はない。グリッド電圧はマイナス電源を基準として、その変動に対応して打ち消す方向に1/μで変動するように設計しなければならなかった。あるいはサーボとか直流帰還とか。

おまけに基板との結線ミスでLM334Zを壊してしまった。負荷のキャパシタンスを考慮したSRPPの平衡条件等を考えずに普通のSRPPにしとけば良かったか?

また、バイアスの問題だけではなく、周波数特性はスッキリ伸びて、おまけに150kHzあたりに不要な盛り上がりを生じているし、方形波のオーバーシュートを見るとMHz台に不安定な何か問題もはらんでいるようで、カソードフォロワの挿入が本当に良かったかどうか疑問。カソードフォロワは本当に難しい。

キャパシタによる位相補正の代わりに終段のミラー効果を期待して下側の6463のグリッドに入れた1 kΩを2.2 kΩに換えてみたが、オーバーシュート抑制には全くならず、むしろ100 kHzより上の盛り上がりが大きくなったようだ。カソードフォロワの安定のため、MHz台の発振予防には抵抗を入れておきたいが、抵抗値と実装には注意が必要。470 Ω位が良いのかも。

カソードフォロワを外して、初段(12AU6)の負荷インピーダンスを下げて、利得は犠牲にする者の終段のミラー効果との兼ね合いでそこそこの高域周波数特性を維持し、通常のSRPPかµフォロワにして、上下ともに自己バイアスにすれば電源変動が出力端子の電圧に大きく影響することはないだろう。µフォロワのカソード側に入れる大きめの抵抗にコンデンサーをパラに入れれば、負荷のキャパシタンスを考慮したSRPPの平衡条件もクリヤできるかもしれない。その分、その大きめの抵抗に無視できない電圧が生じるので共通カソードに抵抗を入れてACバランスをとることは難しい。負荷のキャパシタンスを考慮したSRPPの平衡条件の吟味は使える回路なのかどうか一度きちんと評価したいところではある。

12AU6(むろん6AU6等同等管も)は小型だがタフな球である。供給電圧250 Vでプレート電圧100 V位にすれば、プレート抵抗を100 kΩ、次段グリッド抵抗を同じく100 kΩと低くすると合成負荷インピーダンスも約50 kΩと低くなるが、それでも増幅利得80倍、出力電圧28 V位は得られる。軽くNFBを掛ける位の余裕はある。カソードフォロワを省いても周波数も-3dBで30 kHz程度ならいけるだろう。バイアスの与え方をひと工夫してカソードフォロワを活かすか、カソードフォロワを除いて終段を自己バイアスにするか、思案の為所だ。






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